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550. 白石加奈子との再会
そこに梁田が
「え?静香さんのお知り合い?」
静香は直ぐに店を出たかった。白石とは会いたくなかったのだ。
しかし、梁田と来てしまった以上逃げるわけにもいかなかった。
ここはとにかく大人の対応をするしかなかった静香だった。
「ええ。前の仕事で一緒に働いていた人です。
居酒屋を経営したの?加奈子さん?
夢が叶って良かったですね。」
「随分他人行儀だな。まあ、私もあれから目を手術するために入院して、退院するときはこっちのアパートに引っ越ししたからな。」
「憲一が加奈子さんに会いたいって言って…
ホテルに行ったら管理人のマスターが外にいて…
加奈子さんがラウンジを辞めて入院したって聞いて…
その後病院に行ったんだけど…その消息が掴めなかったから、憲一もがっかりして帰ったの。」
「そっか。憲ちゃんにはすまなかったと伝えてくれ。
憲ちゃんのお陰で私は居酒屋を経営することが出来たんだもんな。
こっちに来てから、店を出すために知り合いの所で修行したんだ。
結構味には自信ついたぞ。
まあお二人さん、カウンターに座ってくださいな。」
こじんまりとしたお店だったが、カウンター席は8人座れた。
テーブルは4つあった。
「ママ!おでん2つといか下足1つ!」
大学生位のバイトの男の子が白石に注文書を渡した。
「はい!わかりました。」
梁田は店内に貼ってあったメニューを見ながら
「とりあえずセットと生中お願いします。
静香さんは?」
「えっと、私も生で!」
バイトの子がビールサーバーで生中を注いだ。
「お待ちどうさま!」
生中が2人のテーブルに置かれた。
「加奈子さんも飲みますか?」
静香はとりあえず頼んだ方がいいかと口にした。
「ありがとう。直ちゃん!生中!」
静香はバイトの子の名前を聞いてビックリした。
『なおちゃん?やだ。尚ちゃんと同じ名前?』
もう、静香の心臓はその一言で今から白石に何を言われるのか想像がついて、心臓の鼓動が早くなった。
『もう帰りたい。
加奈子さん…今日子さんの前では尚ちゃんの事どうか言わないで欲しい』
祈るような気持ちで下を向いた。
「それじゃ、再会を祝って乾杯!」
何も知らない梁田が乾杯音頭を取った。
カチャカチャとジョッキーの音を鳴らして3人は勢い良く飲んだ。
「うーん。美味しい♪」
梁田が一気飲みした。
静香は一口だけ飲んだ。もう、酔うどころではなかった。
白石はぐいぐいと飲んで、飲み干した。
「ママさん!カッコいい。私、惚れちゃいそう♪」
梁田が突拍子も無いことを口走る。
「ハハハ。そっか?
私は良く女性にモテるんだ。
なんでかな?
こんなに色っぽい着物着ているのにな!
男性には全くモテないんだけどな。」
「強面でクールで背が高くて男っぽい女性が好きなの♪
女性ってそういう所があるんだと思いますよ。
ほら、宝塚の男役が好きな女性が多いじゃ無いですか!
ママって宝塚に出てくる男優みたいだもの♪
憧れるわ〰️。」
あの長い髪の面影はなく、ボーイッシュにショートヘアだ。
それがとても似合っていた白石だった。
ちょっと古風な意気な着物を着て白いエプロンをかけていた。
「加奈さん?着物の気付けはいつもどうしてるの?」
静香が聞くと
「うん、お袋の味で居酒屋をやりたかったから着付けは覚えた。
ここまで来るのに結構色々勉強したよ(笑)」
「それ!男っぽいのに着物が似合って着付けが出来るなんて…
ギャップ萌え~♪」
一気飲みしたせいか、梁田が白石にハート目で言った。
「ハハハ。良く言われるよ。
ママさんはもしかしてオネエなの?ってな(笑)」
「キャハハ。ママに失礼ね。オネエじゃないわよ。宝塚の星組よ!ね!」
梁田はご機嫌に酔っていた。
「静香?今、何の仕事しているんだ?」
「え?あ。保険会社の事務員。
こちらはヘルプの今日子さんなの。」
「ヘルプ?」
「そう。私は営業所の事務員が産休とか、入院とかで長い休みを1人が取ると、その助っ人で全国何処でも行くヘルプの仕事なの〰️。」
梁田は酔ったせいか、ぺらぺらとしゃべり出した。
「柏営業所の事務員が入院したから、静香さんの助っ人で来月半ばまでお世話になるの。
今日は静香さんととことん飲むのにここに来たってわけ~♪」
「へえ?保険会社の事務員になったのか?
車で来てるのか?」
「あ。土浦駅から電車で来てるの。
柏で飲むなんて、今日が初めてなの。」
「そっか、でも初めて柏の居酒屋に来て、静香と会うとはな。
偶然じゃなくて必然なのかもな。
私は…二度と会わないと思っていたから…」
そんな会話を横で聴いてた梁田が
「え~。どういう意味~?もしかして、不倫の相手ってママの事なの~?」
酔った勢いなのか、梁田が突拍子も無いことを口走った。
「だ!だから!そんなことしてないってはじめから言ってるのに!」
もう!やめてよ〰️。その2文字を加奈さんの前で言わないで〰️!!
もう、何を言い出すのか梁田の言葉がヒヤヒヤして口を塞ぎたい気持ちにかられた静香だった。
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