552. 飯田からの電話

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552. 飯田からの電話

静香は梁田を横目にホテルのテーブルに置いてあったメモ帳に手紙を書いた。 『居酒屋で酔って眠ってしまった今日子さんをタクシーでホテルに連れて来ました。 ホテルまではタクシーの運転手さんに今日子さんを運んでもらって、ホテルから部屋まではホテルマンに連れていってもらいました。 今日は楽しかったです。 最後に今日子さんに寝られてしまって寂しかったけど… チェックアウトは10時です。 起きられないときはロビーに連絡すると少しの割増料金で済むようです。 とりあえず、今日子さんの具合は悪そうでは無いのでこのまま帰ります。 お休みなさい。 静香より』 手紙はそのままテーブルの上に置いた。 「今日子さん?帰るよ?」 スヤスヤと寝ている梁田の服装はブラウスとフレアースカートだった。 なんだかボタンを外してあげないと苦しそうに見えた。 『酔ってる時って首の回りは緩くしたいのよね?』 ブラウスの一番上のボタンを外してあげた。 その時、梁田の手が静香の腕を掴んだ。 「帰っちゃいや。」 「え?」 起きてるの? 静香は梁田の顔をまじまじと見た。 「所長~。帰っちゃいや~。」 どうやら、梁田は寝ぼけているらしい。 夢でも見ているのだろうと静香は思った。 「所長は遊びでも、私は本気なんだから~。」 静香は梁田の心の奥を知ってしまったような気がした。 3人彼氏が居るって言ってたわよね? 誰の事を言っているんだろう? 3人の中で本気な人が1人居るって事よね? 静香は梁田の頭を撫でて 「ごめんね。帰るから手を放して?」 「なんで夜行列車で青森に帰るの?」 あ!東京の所長だよね? まさか、柏の所長じゃないよね? 何か、思い出しちゃったのかな? 「明日はデートの約束したのに~!」 デート?そうなんだ。それはショックね。 「来週行けばいいじゃない?ね?」 慰めるように静香は梁田が掴んだ手に添えた。 「来週は接待ゴルフ。再来週は所長会議! その次は営業所の進発式で夜お泊まりでしょ? 私…避けられてるの?」 そう言うと、梁田の眼から涙が溢れた。 今日子さんも辛い恋をしているのね… 静香はティッシュで涙を拭いてあげると 「今日子さん。おやすみなさい。」 そう言って、掛布とんをそっとかけてあげた。 眠りに落ちたのか、今度は清々しい顔になって眠っていた。 パタン 静香は部屋を出てロビーの受け付けに話をして、最終電車に乗って帰って行った。 「終点の土浦駅です。お忘れ物がないように下車してください。」 静香は階段を降りて行くと携帯が鳴った。 飯田からだった。 「もしもし。尚ちゃん?お仕事終わったの?」 『ああ。店は暖簾を下ろしたよ。 まだ、今から明日の下準備があるけどな。 とりあえず、休憩中。今どこ? 駅のホームか?終電で飲み会から帰ってきたのか?』 「うん。一緒に飲んだ事務員が酔っぱらっちゃってね。」 静香は白石が居酒屋をしていたこと。 その後、ビジネスホテルまで梁田を連れて行ったことを話した。 『そっか。連れが酔っぱらいじゃ、今日は静香は酔っぱらえなかったんだな。 加奈子さんが居酒屋始めていたんだ。 凄いな。料理出来なかった人間がな! 俺も負けてらんねえな!』 もう。そう言うところ本当に姉弟よね~。 面と向かって言えないけどね。 『なあ?先週旦那が帰宅でさ。今週は飲み会でさ。 俺…静香に会いたいよ! 飲み会で静香が酔っ払って所長に持ち帰られたらと思って電話したんだよ。』 「やーね。私の事なんて持ち帰ってなんてくれないよ〰️!」 『え?なんだよ〰️。その言い方~? 所長に持ち帰って欲しいみたいな言い方だぞ〰️!』 「え?そんなこと思って無いよ? なんでそうなるの?」 『お持ち帰りなら俺が持ち帰る! なあ。今から会えないかな?』 時計を見たら12:30過ぎていた。 「無理よ〰️。会ったら朝帰りになっちゃうわよ〰️。」 「駄目か?同僚が酔っ払って静香もビジネスホテルに泊まる事になったって言えばいいんじゃなか? 俺は静香に会いたいよ。会いたいんだ!」 もう!わがまま言わないでよ〰️。 でも、体は正直だ。飯田の声で体が熱くて堪らなくなった。 『静香だって、もう濡れてるくせに〰️。 それなのに…俺はこの頃避けられてるのか? 会いたいって言ってくれないよな?』 その一言で、さっきの梁田の寝言が木霊した。 『私は本気なの~。私は避けられてるのかな?』 「もう。避けてるわけないでしょ! 私だって尚ちゃんに会いたいよ。」 静香のその言葉に機嫌が治った飯田が 『それじゃ、静香は駐車場に居ろよ! すぐに出るから!俺が代行するから(笑)』 「え?尚ちゃん?休憩中じゃなかったの?」 『今から実家に帰らなきゃ行けなくなったとチーフに言って、今から出るから! 1時間後に着くよ♪じゃあ!』 飯田はルンルン気分で電話を切った。 「1時間後って…2時近くになるんじゃないの?」 もう、どうにでもなれと言う気持ちで飯田を待った。
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