553. ブランチで

1/1

278人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ

553. ブランチで

9:40 フロントから電話が鳴り響いた。 静香はビックリしてベッドから飛び起きた。 「尚ちゃん!9:40過ぎてる〰️。」 静香は急いで電話に出た。 「もしもし」 「はい!10時には出ます!」 静香のフロントとのやり取りで、飯田もやっと目が覚めた。 「いや~。ぐっすり寝ちゃたんだな。 朝飯どうする? 確か、モーニングサービスが無料だったよな?」 「あ。フロントがモーニングサービスのおにぎり召し上がりますか? って言ってくれたけど、10時には出るって言ったから、パックに入れて持ってきてくれるって。」 ピーンポーン! 「あ。出前口の所に置いてくれたみたい。」 「そっか。それじゃ、車の中で食べようか。 さっさと出よう!」 2人は着替えるとギリギリ10時5分前に現金自動預け払い機にお金を入れて、鍵が開いた。 そして、急いで車に乗り込んだ。 「これからデートしたいところだけど、我慢するよ。 静香の車の駐車場に向かうよ。」 「うん。ありがとう。デートはまた今度ね。」 飯田はちょっと離れたく無いと言わんばかりに 「おにぎり食べるのやめて、レストランで食事しようよ。 食事くらいいいだろ?」 静香はちょっと躊躇ったが、自宅に電話を入れた。 「もしもし。お母さん?憲一に聞いてくれたのね? うん。今、起きたところ。加奈さんに会ったのよ。 居酒屋を経営していたわ。 それで、話が盛り上がってしまって… 終電に間に合わなくて…同僚とホテルに泊まったの。 うん。帰るのお昼頃になりそう。 ごめんなさい。」 隣で聴いていた飯田が 「よかった。お袋さんは怒って無かったようだな。 ゆっくりブランチできる時間を取ってくれたんだな。 ありがとな。駅近くのレストランでも行こうか?」 静香も頷いて、レストランに向かった。 土浦東口の近くにビジネスホテルがある。 そのホテルの1階がレストランになっているのだ。 ランチは混むから、今の時間が誰も居なくて最高だった。 誰かの目を気にしなくていいから。 知っている人に会うとも限らないから。 「ブランチだからな。しっかり食べて帰ろうか。」 2人はハンバーグステーキとコーヒーを頼んだ。 「ここのハンバーグステーキって結構人気みたいよ。」 「へえ~?静香はここに来たことあるの?」 「うん。同級生とランチに来たことあるよ。」 「そっか。おれは食べに行くってより、居酒屋辺りに飲みに行くっていう感覚だからな。 女性はなんだかんだ言って、食べ物には目がないからな。 情報が半端ないもんな。」 2人は大きな柱に隠れるようなテーブルを選んで座っていた。 「おまちどおさま。ハンバーグステーキセットです。」 ウエイトレスがワゴンでハンバーグセットを運んできた。 そして、テーブルに2人分置いた。 飯田は想像以上に大きなハンバーグに目を見張った。 「でケェ!うまそうだな♪」 2人がハンバーグステーキを堪能して食べていると、エレベーターから男女2人が降りてきた。 そのまま2人は、レストランの入り口を通りすぎて行った。 「え?」 静香は驚いて声を出した。 驚くのも無理もない。 男は、昨日青森に夜行列車で帰ったはずの柏の所長だったのだ。 女性は見た目は静香くらいの年の人だった。 奥さま?まさかね?浮気相手? とっさに静香は大きな柱の影に隠れた。 「静香?どうした?知ってる人が通ったのか?」 ただならぬ静香の顔に飯田は焦った。 「嘘よね?私の見間違いよね? 昨日奢ってもらった所長なのよ。 あの後、実家の青森に夜行列車で帰るからって、早目に帰って行ったのよ。 え?どういう事?エレベーターから降りてきたって…」 「ハハハ。静香は今まで何してたの? 同じような事をしていたんだろ? 所長はラブホではなく、ビジネスホテルにしたってことだけさ。 ビジネスホテルなら誰にも怪しまれないだろ? 飲んで終電間に合わなくて、ビジネスホテルに泊まったって言えば済むことだからな。 明後日、所長に青森に行った感想でも聞いてごらん? どんな反応示すか見物だな♪ 相手の女性は静香は知らないの?」 「うん。知らない。でも、奥さまかも知れないし…」 「そうだな。明後日の所長の返事1つだな。 静香の質問1つで全てがわかるよ。」 静香は何だか、見てはいけないものを見てしまって困惑していた。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加