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553. ブランチで
9:40
フロントから電話が鳴り響いた。
静香はビックリしてベッドから飛び起きた。
「尚ちゃん!9:40過ぎてる〰️。」
静香は急いで電話に出た。
「もしもし」
「はい!10時には出ます!」
静香のフロントとのやり取りで、飯田もやっと目が覚めた。
「いや~。ぐっすり寝ちゃたんだな。
朝飯どうする?
確か、モーニングサービスが無料だったよな?」
「あ。フロントがモーニングサービスのおにぎり召し上がりますか?
って言ってくれたけど、10時には出るって言ったから、パックに入れて持ってきてくれるって。」
ピーンポーン!
「あ。出前口の所に置いてくれたみたい。」
「そっか。それじゃ、車の中で食べようか。
さっさと出よう!」
2人は着替えるとギリギリ10時5分前に現金自動預け払い機にお金を入れて、鍵が開いた。
そして、急いで車に乗り込んだ。
「これからデートしたいところだけど、我慢するよ。
静香の車の駐車場に向かうよ。」
「うん。ありがとう。デートはまた今度ね。」
飯田はちょっと離れたく無いと言わんばかりに
「おにぎり食べるのやめて、レストランで食事しようよ。
食事くらいいいだろ?」
静香はちょっと躊躇ったが、自宅に電話を入れた。
「もしもし。お母さん?憲一に聞いてくれたのね?
うん。今、起きたところ。加奈さんに会ったのよ。
居酒屋を経営していたわ。
それで、話が盛り上がってしまって…
終電に間に合わなくて…同僚とホテルに泊まったの。
うん。帰るのお昼頃になりそう。
ごめんなさい。」
隣で聴いていた飯田が
「よかった。お袋さんは怒って無かったようだな。
ゆっくりブランチできる時間を取ってくれたんだな。
ありがとな。駅近くのレストランでも行こうか?」
静香も頷いて、レストランに向かった。
土浦東口の近くにビジネスホテルがある。
そのホテルの1階がレストランになっているのだ。
ランチは混むから、今の時間が誰も居なくて最高だった。
誰かの目を気にしなくていいから。
知っている人に会うとも限らないから。
「ブランチだからな。しっかり食べて帰ろうか。」
2人はハンバーグステーキとコーヒーを頼んだ。
「ここのハンバーグステーキって結構人気みたいよ。」
「へえ~?静香はここに来たことあるの?」
「うん。同級生とランチに来たことあるよ。」
「そっか。おれは食べに行くってより、居酒屋辺りに飲みに行くっていう感覚だからな。
女性はなんだかんだ言って、食べ物には目がないからな。
情報が半端ないもんな。」
2人は大きな柱に隠れるようなテーブルを選んで座っていた。
「おまちどおさま。ハンバーグステーキセットです。」
ウエイトレスがワゴンでハンバーグセットを運んできた。
そして、テーブルに2人分置いた。
飯田は想像以上に大きなハンバーグに目を見張った。
「でケェ!うまそうだな♪」
2人がハンバーグステーキを堪能して食べていると、エレベーターから男女2人が降りてきた。
そのまま2人は、レストランの入り口を通りすぎて行った。
「え?」
静香は驚いて声を出した。
驚くのも無理もない。
男は、昨日青森に夜行列車で帰ったはずの柏の所長だったのだ。
女性は見た目は静香くらいの年の人だった。
奥さま?まさかね?浮気相手?
とっさに静香は大きな柱の影に隠れた。
「静香?どうした?知ってる人が通ったのか?」
ただならぬ静香の顔に飯田は焦った。
「嘘よね?私の見間違いよね?
昨日奢ってもらった所長なのよ。
あの後、実家の青森に夜行列車で帰るからって、早目に帰って行ったのよ。
え?どういう事?エレベーターから降りてきたって…」
「ハハハ。静香は今まで何してたの?
同じような事をしていたんだろ?
所長はラブホではなく、ビジネスホテルにしたってことだけさ。
ビジネスホテルなら誰にも怪しまれないだろ?
飲んで終電間に合わなくて、ビジネスホテルに泊まったって言えば済むことだからな。
明後日、所長に青森に行った感想でも聞いてごらん?
どんな反応示すか見物だな♪
相手の女性は静香は知らないの?」
「うん。知らない。でも、奥さまかも知れないし…」
「そうだな。明後日の所長の返事1つだな。
静香の質問1つで全てがわかるよ。」
静香は何だか、見てはいけないものを見てしまって困惑していた。
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