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555. 所長へのお礼は
月曜日になった。
昨日の日曜日は前の家と今の実家の草を狩り払い機で、綺麗に草刈りをした。
母親と家の中にいるより、親の自覚が足りなかったのを補うように外での仕事をしたのだ。
「なんか…体が痛い。肩凝った〰️。」
静香はそんなことを言いながら会社に向かった。
所長に何て言おう。
別に反応なんてどうでもいいよ。
高価なお料理を奢ってもらったしね。
ごちそうさまだけ言おう。
静香は自分の事を棚にあげて、所長の顔をうかがうなんて事は出来なかった。
会社に着くと、もう梁田が来ていた。
「おはよう!静香さん。金曜日はごめんなさいね。
本当に色々ありがとう!」
梁田は静香の手を握り、手の平に小さな箱を乗せた。
「え?なあに?これ。」
梁田は笑顔で
「お世話になったお返し♪」
白い小さな箱に赤いリボンが結んであった。
「静香さんに似合うと思うわ♪
開けて見て♪」
そう言われて、静香は席に座るとリボンをほどいた。
箱の中に入っていたのは、イヤリングだった。
金メッキで出来ているのだろうか?
何の形なのかな?
静香はまじまじと手の平に乗せて見た。
「可愛い~。てんとう虫のイヤリングなんだ♪
今日子さんってセンスいいわ♪」
「良かった♪気に入ってもらって♪
ねえ?イヤリングを着けて見せて?」
静香は早速イヤリングを着けてみた。
「ほら!静香さんに似合うわ。」
そこに所長がやってきて
「あ。所長。金曜日はごちそうさまでした。」
静香はお礼の言葉だけ告げた。
「いやいや。皆には内緒だよ。
梁田さん。可愛いタイピンありがとう。」
所長のネクタイに電車の形の銀色のタイピンが光っていた。
「昨日。渋谷で可愛いお店を見つけたの。
なんか可愛いアクセサリーがあったから、所長と静香さんに合うかなあって思って。
私はピアスを買ったの。
可愛いでしょ?」
梁田の耳に猫の形のピアスがキラキラとぶら下がっていた。
「わあ。猫のピアス?可愛い〰️。」
あ。でも、私は所長に何もお礼してあげてない。
そう言うところが私は気が利かないのよね。
今日子さんって…さりげなく出来るから、凄いなあ。
「私は所長に何をお返ししよう…」
独り言を静香は小声で溜め息混じりに言った。
それを聞き取った梁田が
「静香さん。気にしないで。所長にあげたのはたいして高くないの。
ほら。所長は夜行列車で自宅に帰ったから電車の形のタイピンが目に入っただけだから♪
ホントは静香さんだけに買って行こうと思ったのよ。
嫌な気持ちにさせてごめんなさいね。」
隣に座ってパソコンを立ち上げながら、静香に話しかけた。
そう言ってはくれたけど…やっぱり何かしらお礼をしないと…
お昼になり、今日は静香が先に1時間休憩になった。
事務員が2人の場合はずれて食事を取る。
『そうだ。昼ご飯は『すき家』でさっさと食べて、所長に何か買おう!』
事務所を出ると、すき家に向かった。
「岡野さ~ん。」
背後で誰かの声を聞こえた。
振り向くと所長だった。
「え?所長もお昼ですか?」
「ああ。今日は午後から会議でね。
このまま、電車で東京に行くからさ。
どうせなら、昼飯を一緒に食べようと思って。」
あ。そうだ。それじゃお礼はランチにしよう!
「はい!」
すき家からレストランに変わった静香だった。
3色フライランチセット1100円を2人は頼んだ。
「所長。今日は私の奢りです。この間のお礼です!」
「岡野さん?ダメだよ。私が支払うよ!」
「いいえ。私に奢らせてください!
梁田さんはタイピンがお礼なら、私はランチがお礼です!」
静香の強い要望の眼差しに所長は負けて
「そう。わかった。今日は奢って頂くね。
ありがとう。」
それから2人の話題は、保険料の改訂の話になり、新商品の話になった。
「これからは掛け捨ての保険商品が主流になるだろうな。
そして、女性の所長が増える時代に突入だ。」
「え?そうなんですか?」
「実はさ。一昨日、夜行列車で帰ってないんだ。」
静香は心臓がドキリとした。
え?なぜ、私に本当の事を言うの?
もしかしたら、私達がブランチしていたのわかっていたとか?
静香はその後の所長の話が気になって、仕方がなかった。
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