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558. 誤解
「ごめんごめん。岡野さんと旦那さんはラブラブなんだ~。
てっきり単身赴任で愛が冷めてる仲なのかと思っちゃたよ。
だってさ。一昨日岡野さんがビジネスホテルから出てきて駅に向かって横断歩道をわたっていたからさ…
旦那さんとだったら、2人で歩いていない?」
静香は見られてたと思ったら、顔があおざめた。
心臓の鼓動がバクバクと激しく鳴る。
どうしよう…なんて切り替えそう。
とにかくここは否定しないと!
「え?横断歩道?何処で見ていたの?」
静香は心を落ち着かせるためにあえて質問した。
相手の行動を読み取らないとうかつな事は言えないからだ。
「その交差点の2台目で信号待ちしていたよ。
俺は仕事していたから、お客様とその先のレストランで待ち合わせしていたんだ。」
そうなんだ。後をつけられてた訳ではないんだ。
「あ。そうなの。私はいつもの月掛け駐車場に車を取りに行ってたの。
旦那が電車で帰ってきたから、迎えに行ったのよ。
迎えに行く前に旦那があそこのビジネスホテルのレストランでハンバーグステーキが食べたいって言ってね。
それじゃ、2人で食べようって約束して車は月掛けの所に置いて、改札口で旦那と歩いてホテルのレストランに向かったの。
だから、旦那の荷物があったから旦那をレストランに残して車を取りに行ったのよ。
取りに行く途中で、青木さんに横断歩道を渡る姿を見られてたのね。
そうか。ホテルから出てきたから、おかしいと思ったのよね?」
静香は冷静に話を作りながら言った。
「静香さんって、ホントに旦那様とラブラブなのね~。
私はてっきり彼氏とそこのホテルで待ち合わせして一夜を過ごしたのかと思ったわ。
だって、酔いつぶれた私を見捨てて電車に乗って帰ってしまったから。」
「酔いつぶれた今日子さんを見捨ててなんて…
ちゃんと手紙を書いてベッドに寝かせてかえったわよ?
何でそこに彼氏っていう単語が出てくるの?
私は不倫なんてしてないって言ったわよね?
今日子さん?臆測で他人に話をしないで!」
ここはきつく言わないと大変な事になると思った。
「まあ!いつもの静香さんと違って怖いこと!
そこまで言われると、反対に疑ってしまう私なのよね。
まあいいわ。お昼のバトンタッチね。」
「俺も仕事に出掛けるよ!」
2人は一緒にフロアーのドアを開けて出ていった。
静香はフロアーに一人になって、大きな溜め息をした。
横断歩道を渡るのを見られていたなんて〰️。
歩いて帰る方が安全だと思ったのに〰️。
尚ちゃんの車の向後座席に座って、駐車場まで乗せてもらった方が良かったんだ〰️。
結構、私って見られてるよね〰️。
自分の席の机に頭を乗せて、自分の行動に反省した。
さっきの作り話は無理があったかな?
今日子さんは余計、疑っているみたいだったけど…
きつい言い方しちゃって…今日子さん?
怒っているだろうなあ。
だって…あの場合。尚ちゃんとの事よりも、所長が泊まっていたホテルだもの。
所長の不倫相手は私?なんて事にも繋がってしまいそうだもの。
絶対に嫌よ!
でも…あの言い方は先輩の今日子さんに失礼よね?
帰って来たら謝ろう。ギクシャクして仕事したくないもの。
1時間後、梁田がお昼の休憩から帰ってきた。
いつもは笑顔で静香の隣に座る梁田だったが、静香とは目線も合わせようともせず黙って 席に着いた。
パソコンを開きながら
「静香さんって秘密主義者ね。
私は何でも静香さんに話して来たのに…
同じ立場なのに何でそんなに私にまで隠すの?
彼にさっき電話で聞いたわよ?
所長は金曜日に夜行列車で帰らず、次の日に飛行機で青森に帰ってきたって。
青森の祭りに私の彼も帰ったんだけど…
向こうで会ってそんなことをここの所長が口走ったって。
金曜日の夜に何があったのか知らないが、夜行列車の中で会おうなんて言ってて、明日飛行機で行くとだけメールがあったって。
青木さんが静香さんが横断歩道を渡るのを見て、やっぱり所長とできてるのは決定的だと私は思うんだけど…
どちらも配偶者がいる仲ですものね。
所長の出世にも影響するから、静香さんは絶対に所長との不倫関係は誰にも言えなかったのよね?
でも、私にだけは言ってほしかったわ…」
と、梁田の口から思いもよらぬ誤解の話が出てきて、静香は焦ってしまった。
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