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559. 嘘を暴かれた静香
「ち、違うのよ。本当に旦那とあのレストランで食事をしていたのよ!
さっき言ったことは本当なのよ!」
梁田は疑いの眼差しで、
「そう?それじゃ、今から静香さんの自宅に電話して、お母様に金曜日の夜、私が酔っ払った為に介抱してくれて遅くしてしまいすみませんでしたって電話入れるわね。」
静香は余計に焦った。
そんなことをしたら、母親に帰ったら嘘をついて飯田とホテルに行っていたことがバレてしまう!
「わかった!わかったから、自宅に電話するのは止めてください。
今日の仕事帰りに、ちゃんと話すから!
お願いします。」
静香は営業マンがちらほら帰って来て、机に座っていたのを見て今話すのはできないと判断した。
梁田は笑みを浮かべて
「わかったわ。今日は所長は本社からの帰りは直帰だから、ぴったり5時半には会社を出ましょう。
仕事はキッチリ。ミス無くね。
午後も頑張って仕事しましょうね。
静香さんとお茶するの楽しみにしてるわ♪」
静香は梁田の笑みが怖かった。
所長との約束を破ってしまうのは心苦しいけど、所長と私ができてるなんて噂を流されたら嫌だもの!
ここはちゃんと話しておかないと!
静香は仕事に集中して、ぴったり定時で帰れるように仕事をした。
17時半
「電話は留守電に切り返したし、宅急便は済んだし大丈夫ね。」
「はい。窓の鍵も電源も確認しました。」
「しかし、所長が帰って来ないの知ってると社員は夕方早く帰ってきて事務整理したら『営業に行ってきます』とフロアーを後にするけど…本当に仕事しているのかしらね?
私なら自宅に帰っちゃうけどね(笑)」
確かにいつもは、夕方ちらほら営業マンが遅くまでいるのに、所長が居ないとこうも違うものなのか…
でもキチッと夕方5時半に帰社出きるのは嬉しいかも。
でも…今日は梁田と土曜日の事を話すのが口が重く逃げて帰りたい。
静香はそんな気持ちで会社を後にした。
「ねえ?駅前の喫茶店でお茶しましょう♪」
2人は会社の近くの横断歩道を渡ると喫茶店に向かった。
〈喫茶店で〉
「静香さん?そんな話で私を騙せると思う?」
「え?だから、本当の事なのよ!
信じて欲しい。」
静香は今日のランチの時に、所長が話してくれた全てを梁田に話した。
梁田は鼻から信じないだろうと所長が言ってたこと思い出した。
「それじゃ、質問ね!
所長が前の社員と話をしたのは本当の事だとして、どうして偶然鉢合わせた話になるの?」
「え?だから…次の午前中、旦那を迎えに行って、ホテルのレストランで食事をしていて、所長も彼女と食事をしようとしたら、私の姿を見かけて焦ってホテルを出たっていってたわ。」
梁田は口にしたウィンナーコーヒーを皿に置くと
「そこよ。所長の話も胡散臭いけど、静香さんの話が嘘バレバレじゃない?」
静香の心臓の鼓動が高鳴った。
「その話が全て本当の事なら、私が昼間静香さんの自宅に電話するって言ったとき、『ええ。どうぞ!』って言えなかったの?
会社には社員の緊急連絡先として、旦那さんの携帯も記載しているはずだから、私が旦那さんに直接電話して聞くことも出来るのよ?
明日、調べて旦那さんに土曜日に帰ってきたのかどうか聞いていいかしら?
ご挨拶も兼ねて。」
梁田は静香の嘘を暴こうとしていた。
蛇に睨まれた蛙のような静香だ。
「わかったわ。本当の事を話します。」
静香は観念した。
梁田の電話1本で岡野家は大騒ぎになる。
出ていく覚悟はあるものの、憲一に軽蔑されるのだけは避けたかった。
母親の身体の事もあるし、だいたい飯田の両親も静香のことを反対しているのだから、2人の仲を引き裂かれる事は火を見るよりも明らかな事だ。
会社に勤めている静香には、とにかくここは穏便に事を運びたかった。
社員達は浮気の相手は所長だと言われてしまうに違いないから。
所長にも迷惑をかけてしまう。
そんな考えが脳裏に浮かんで、梁田に飯田の話をすることを覚悟した静香だった。
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