563. 守との再会

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563. 守との再会

「え?あ、守さん?」 静香は想定外の守の出現に戸惑った。 なんて言おう…でも、守さんは私達の仲を知っているのよね。 「今まで、会社の人と隣の店で食事していたの。 食べ終わって、会社の人と今別れた所よ。」 「隣って尚人が働いてる店の事? あ。そうか。社長は尚人を待ってるのか? それで寿司屋で待ってろって言われたんだ。」 守さんは何でもお見通しね。 「ここの寿司屋の‘’おまかせ握り寿司‘’はネタが大きくて新鮮で美味しいんだ。 たまに食べたくなって、ここに来るんだ。 尚人もバカだな。 ここの店は知ってる人が結構来るのに… 待ち合わせ場所はミスだな(笑)」 あ。そうなんだ。そうよね。私達はお忍びなのに…どうしよう。変な噂たてられたら… 「社長?俺と一緒なら噂されないよ。 俺の姉さんって事にして、中に入ろうか?」 守さんのお姉さん?そうね。彼女か?なんてお店の人に言われるのも嫌よね? 「ええ。お姉さんでお願いします。」 2人は寿司屋の暖簾をくぐった。 「へい!いらっしゃい!お!守さん?彼女?」 ほら来た。そうなるわよね? 「いや。姉貴だ。」 「はじめまして。守がお世話になります。」 静香は姉になりきって演技をした。 「おまかせ握り寿司お願いするよ。 社…いや、姉貴は?」 「私はお腹いっぱいだから…厚焼き玉子食べようかな。」 「あと、厚焼き玉子。」 「へい!わかりました!」 「姉貴?何か飲む?」 「そうね。それじゃ、焼酎のお茶割り。」 「渋いな(笑)俺は日本酒。」 2人で乾杯をした。 「社長と2人きりで飲むのなんて、はじめてだな。 隣の店には良く来てたの?」 「ううん。はじめてよ。 尚ちゃんが副店長になって挨拶をしてくれた姿もはじめて見たの。」 「え?副店長になったのか? 尚人は何にも言わないからな。知らなかった。 今日だって、社長が会社の人と来るなんて一言も言って無かったぞ。 たく、あいつは秘密主義者だからな! 俺は何を聞いても、ペラペラしゃべる人間じゃないのにさ。信用してないんだよな。」 「違うわよ。守さんの事は信用してるし、何でも話せる唯一の親友だって言ってたわ。 ただ、話さない方がいいこともあるんじゃないのかしら?」 「話さなくていいこと?」 「今日、私が来ることよ。 尚ちゃんのお母さんは守さんに色々聞いてくるんでしょ?」 「そんなに頻繁にではないよ? 実家に帰るのは月に一回位だし… ましてや尚人の母親に会うなんて早々ないよ。 まあ、電話がたまにあるくらいかな? いつも俺は知らないで通しているしな。」 「そこよ。頻繁じゃなくても会う時があるからよ。 守さんだって、知らなければ知らないで通せるけど、知ってしまうと尚ちゃんのお母さんは守さんの目を見て話すから、守さんの目が泳いでいるとお母さんにわかってしまう時もあるからだと思うの。 それに、電話だって嘘を言うと言葉に詰まったりするでしょ?」 「そっか。俺の嘘がバレたら尚人は怖いんだな。 血が繋がって無くても、そんなに尚人が心配なのかな? いっぱしの男なんだから、黙って見守ってあげればいいのにな。」 「血が繋がって無いからなのよ。」 「え?」 「ママ母だから、息子が心配なのよ。 こぶつき女と一緒になったら世間体もあるけど、自分と同じ立場になるからだと思う。 私が母親の立場だったら、きっと反対するから。 お義母さん…尚ちゃんと本当の親子になるのに、苦労したと思うから…」 「そっか。俺のお袋は10年前癌で亡くなって…親父が4年前に亡くなって… どっちもいないから…心配してくれる親がいて幸せだよな。」 「守さん…」 「あ。社長?尚人にメールしておけよ? 俺と一緒に、俺の姉貴としているからって。 あいつに焼きもち妬かれたり、姉貴じゃないなんて言われたら俺の立場無いからさ。」 「あ。そうね。」 静香は飯田にメールをした。 10分後、飯田がやって来た。 「ゴメンゴメン。待たせたな。」 それだけ言って、飯田は静香の隣に座った。 「いつものやつくれる?」 「あいよ!」 尚ちゃんは常連客なのね。いつものやつでわかるんだから。 「守?何でここに来ること知ってたの?」 「偶然、寿司屋の暖簾の前で会ったんだよ。 今夜はここでいつもの寿司を食べたかったんだよ。 尚人、ここは密会にならないぞ? 結構知ってる客もいるだろ?」 「あ。そうだよな。だけど、もう10時になるからここ以外は飲み屋位しか開いてないし… 喫茶店は終わっちゃうしさ。 他に考えられなくてさ。とりあえず、世話になった社長と呑む事になってるから早退け出来たんだ。 この場所が二次会って事にした。」 「二次会ね。尚人も悪知恵働くよな(笑)」 「たまには息抜きさせてくれよ。 せっかく社長と会えたんだからさ。」 「息抜きじゃなくて、あっちを抜きたいんだろ?(笑)」 静香は赤面して、下を向いた。
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