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565. 飯田の車の中での会話
「でもさ。守兄弟は不動産屋の息子だったからな。
町の一、ニ位を争う金持ちだ。
母親が死んだ後は家政婦を雇っていたし、親父は忙しく関東圏内動いていたからさ、2人の運転手がいたんだ。
だから、若い運転手を平日2日休ませて、土日はマリオ達のおかかい運転手になってくれてたんだよ。
だから、俺達と違ってお金には困らない生活をしていた。
端から見たら羨ましい生活をしていたと思う
あの頃は俺自身は金もないのに、マリオと遊んで沢山あやかっていたよ(笑)
バブルだったんだよな~♪
今は、それなりに不動産が大きくなるとマリオも従業員を増やさないといけないからな。
今は運転手を解雇して、高い車を乗るのはやめて、ガソリン代があまりかからないフィットでマリオが自分で運転して、関東を走ってるよ(笑)」
一人一人の人生は何処かで辛い分、幸せも与えてもらえるものなのかもと静香は思った。
「でさ。守から聞いたんだけど、マリオ見合いしたんだってさ。
親戚におせっかい叔母さんがいるんだけど、そろそろ28歳になるから落ち着かないと駄目よって言われて。
なんか相性良かったみたいで、結婚前提で付き合ってるみたいだ。
次は守ね?って叔母さんに言われているみたいだよ。
守の条件は釣り好きな女で、魚料理が上手い女性らしい。
あいつらしいよな。」
「見つかるといいわね♪」
結婚か~。そんな年になって来てるのね。
尚ちゃんだって…したいわよね?
「尚ちゃん。ごめんなさい。
私の母親の病気が気になって…
今は尚ちゃんの胸に飛び込めない…
憲一も3年生だし、もう少し待っててくれる?」
静香はそう言うのが精一杯だった。
飯田は静香の頭を撫でながら
「こっちこそ待って欲しいよ。
まだまだ、仕事も未熟だし副店長って言ったって静香を養うお金までは貰えていないよ。
親父とお袋に静香との仲を納得させられる勘当されないようないっぱしの男にもなりたいしさ。
全てを整えるのに後5年はかかると思うから。
俺達は焦らずにゆっくりと2人で愛を育もう。な?」
静香は飯田の言葉に胸が熱くなり、涙が止まらなくなった。
「なんだよ。泣くなよ。別れ話してるわけじゃ無いんだから。」
「悲しくて泣いてんじゃないの。
嬉し泣きよ。5年も待ってくれるなんて…ありがとう。」
「バカだなあ。5年も恋人同士でいられるんだぞ?
ラブラブの時間が5年もこれからも続くんだ。
ある意味一緒になるまでの幸せな時間を大切にしたいと思ってるよ。」
静香の心はみるみる幸せな気持ちに満ち溢れていた。
そろそろ静香の自宅に着く。
「尚ちゃん。手前で止まってくれる?
もしかしたら、母親が起きてるかも知れないし…
行きはベンツで帰りはワゴン車ではおかしいから。」
「そうだな。じゃあここで。
静香が家の中に入るまで、ここで見ていてあげるからな。」
ちょうど手前にバスの停留所がある。
そこに車を止めると飯田はフレンチ・キスをした。
「じゃあ。お休み♪」
「お休みなさい。尚ちゃんの料理美味しかった。」
車から降りると、早足で自宅に向かった。
門に入る静香の後ろを飯田はわざと車で通りすぎた。
夜中の1時過ぎだったから、中に入るまで静香が心配だったのだ。
途中、車をUターンさせると、クラクションは鳴らさず又、静香の家を通り過ぎていった。
飯田の車は小さくなって消えて行った。
やはり母親は起きていた。
「遅かったわね。酔っ払って無いようね。
寝ていたんだけど、おトイレに起きちゃたのよ。
夜中の1時過ぎになるなんて…
今から2人が帰宅するときは夜中の2時過ぎちゃうんじゃないの?
所長と事務員の関係だけじゃないわよね?
所長と梁田さんって、お付き合いしているの?」
やはり、こんなに遅くては疑われるわよね?
まあ、私とできてるのなんて言われなくて良かったけど…
「う…ん。所長の奧さんは亡くなってるから…
今日子さんとお付き合いしているみたい。」
「そう。不倫じゃないのね?
それなら別に悲しむ人がいないから構わないわね。
お二人はお似合いだわ。
幸せになれるといいわね♪」
嘘で固めた自分の作り話に静香は頷いて、お風呂に向かった。
「お風呂に入ったら寝るから、お母さんも寝てね♪」
「そうね。」
お母さんに、本当の事なんて言えないよ~。
不倫してるのなんて言ったら、今日子さんの株が下がって何を言われるかわからないもの。
静香はお風呂で大きな溜め息をした。
たとえ飯田と一緒になったとしても、母親は一生認める事は無いような気がした静香だった。
『午前1時過ぎに戻りました』
とだけ梁田にメールした。
『ラブホに行ったの?私達も今ラブホにいるの♪3回戦終わったとこ♪今夜の彼凄いの♪』
静香は梁田のメールに赤面した。
今日子さんって男の人みたいな事を平気で言うのね?
こっちがはずかしくなっちゃうわ💦
静香は飯田の言葉を思い出して、愛に満ち溢れてスッキリした気持ちで、眠りに就いた。
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