576. 母親と病院に行く

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576. 母親と病院に行く

次の朝。 静香は昨日の謝罪のつもりで、日曜日だけど朝早く起きて洗濯を済ませた。 朝食の準備を始めると、静香は母親の為にお粥を作り始めた。 『炭水化物だけじゃ栄養が無いわよね? 野菜と鶏肉を入れて中華風にしようかな。 高麗人参は無いからサムゲタンは作れないけど… あ。作ったこと無いわ(笑) ショウガを入れてさっぱり中華粥を作ろうっと。』 7時半過ぎると、憲一が起きてきた。 「お母さん?みよばあは貧血治った?」 心配な顔をして静香に聞いた。 「まだ寝てると思って、起こして無いわ。 今、みよばあのお粥を作っているから憲一? ちょっと見てきて?」 憲一はパジャマ姿のまま、みよばあの部屋の襖を開けた。 「みよばあ?貧血大丈夫?」 憲一がそう言いながら、部屋に入っていった。 すると、青い顔をして母親が部屋から憲一と出て来た。 「お母さん?大丈夫?具合は?」 良くないと見ればわかるが、わからないふりをした。 病人に顔色の事を言ってはいけないと看護師に聞いていたからだ。 「昨日よりだいぶ良くなったけど… 明日、病院に行ってみるわ…」 母親はパジャマにハンテンを羽織りながら、静香に言った。 「みよばあ?一人で車を運転して行くの?」 憲一の疑問に静香も 「お母さん?明日は会社を休むから私が病院まで乗せて行くわよ。ね?」 母親は黙って頷いた。 「後で今日子さんに電話をするわ。 所長に休むことを伝えてもらうことも言うから。」 「悪いわね… やっぱり運転にこの頃自信が無くなっているから…年を取るって嫌ね…」 ため息をしながら椅子に腰かけた。 「お母さんの為に中華粥を作ったのよ♪ 味見してね?」 「お粥なら食べられそうね。 昨日、食べられなかったらお腹空いたかもね。」 そこへ憲一が 「そうだよ!お母さんが帰って来なかったから、みよばあは心配して夕ごはんも食べないでさ! ふらふらしながら部屋に入って…そのまま寝ちゃったんだよ!」 憲一がまた、昨夜を思い出したら怒りだした。 「はいはい。ごめんなさい。 今日子さんと話に夢中になって、電車に乗るの2本もずらしたお母さんがいけないです。 中華粥、憲一も食べる?」 「うん!食べてみたい。」 食べ物の話に変えたら、憲一はすぐに乗って来た(笑) 「沢山作っちゃったから、皆で食べましょ♪」 母親はそのまま食べて、静香はキムチを乗せて食べた。 憲一はふりかけをかけていた。 「うん!美味しい。鶏肉の出汁がきいてるね♪ みよばあはお肉沢山食べて、貧血治してね♪」 憲一がみよばあのお粥に鶏肉を入れた。 「憲一?いいわよ。おばあちゃんはそんなに食べられないから。」 「ダメだよ。先生がお肉は血や肉の栄養になるって言ってたよ! 本当はレバーがいいのかも知れないけど… 僕が大きくなってレストランを開くまで元気に居てくれないと困るんだからね!」 憲一の言葉にみよばあは涙を浮かべていた。 「そうね。憲一のレストランで皆で食事するのが夢なんだものね… おばあちゃん、憲一の為に長生きしないとね。」 「そうだよ!そのイきだからね♪」 憲一が居ると暗い空気がいっぺんに笑顔になって、希望の光が刺すのだった。 憲一は天使と母親が言う気持ちが、わかる気がした。 食事が終わると静香は自分の部屋で今日子にメールをした。 まだ、沖縄で彼氏と2人で楽しんでいるかと思うと電話はしない方がいいと判断した。 それに、母親に聞かれると嘘がバレてしまうからだ。 『わかったわ。所長に言っとくね。 後でお土産話があるから女子会しましょうね。 お大事にね。』 すぐにメールが返ってきた。 やっぱり、友達はいいもんだとしみじみ思った静香だった。 次の日、朝早く母親と病院に向かった。 8時前には病院に着いた。 「月曜日だから、結構混んでるわね。 まあ、お昼までには帰れると思うからお母さんとランチ食べられると思って気長に待つわ。 今日は私がランチ奢るからね。 お蕎麦の美味しい所に連れてあげるからね。」 静香は一昨日の事で心配していた母親にお詫びの気持ちで言った。 「お蕎麦の美味しい所? 静香は何でも知ってるのね。楽しみにしているわ。」 「会社の営業マンに聞いたのよ。 彼らは毎日外食するから、何処が美味しいか何でも知ってるのよ。」 2人は待ち合い室の椅子に座ると、食べ物の話をしながら母親の番号を呼ばれるまで待っていた。 10時近くになってやっと母親の番号を呼ばれて、2人は診察室に入っていった。 血液検査をしてまた、結果を聞きに診察室に入る2人に先生の顔が渋く嫌な予感がしたのだった。
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