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577. 母親の病気は?
「関根さん。血液検査の結果をお知らせします。
白血球が増えすぎて赤血球が作れない体になっていたので、貧血が何度も起こったのでしょうね。
病名は…急性骨髄性白血病です。
早めに入院して治して行きましょう。」
2人は医師の話に耳を疑った。
「先生?又?入院ですか?」
母親は心配な顔をして先生に質問していた。
「骨髄性白血病の中でも急性ですから、治療はすぐの方が治るのが早いですよ。
急性骨髄性白血病に対し中心となる治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。 化学療法は大きく2つの過程で行われ、初期治療として寛解(かんかい:症状が落ち着いて安定した状態)をめざす寛解導入療法と、その後の完全寛解を維持し白血病細胞をゼロに近づけるための寛解後療法が行われます。
関根さんの場合はこの間、大手術したばかりなので、これ以上体の負担をかけたくないのが現状です。
出来るだけ、化学療法は体に合ったものを選んで治療して行きたいと思います。
来週から病院に入院するために看護師からお話をさせて頂きますので。
関根さん?大丈夫ですよ?私を信じて治療に専念してくれますか?」
母親は涙を流していた。
「…白血病…それって血液の癌って事ですよね?
入院しなかったら…
入院しなくちゃダメなんですか?」
「関根さん?慢性ではありません。
急性なんですね。急性の場合は突然病気がやってくるんですよ。
早く治療すれば完治しますから。
ほっておくと多分後2ヶ月の命になります。
どうか、わかってください。
今はこの病気は白血球を減らす方法しか無いんです。
化学療法しかないんですよ!」
先生の熱い熱意に母親は
「わかりました。急性は化学療法で治るんですね?」
先生は深く頷いた。
「わかりました。入院の準備お願いいたします。」
母親はやっと決意して診察室の椅子から立ち上がり、先生に会釈をして部屋を去った。
それから別室に呼ばれ、看護師から入院の手続きの話になった。
「関根さんはこの間、大手術して五臓六腑のほとんどを切ったり繋げたりしたので、上手く血液が流れない人がまれにいるんです。
抗がん剤治療になるから、初めは吐き気や頭痛、目眩がある人もいます。
白血球を正常に戻ればそんな症状も無くなっていきますから、安心してください。
関根さんの場合は普通の人より少量の抗がん剤から始めますから、酷い嘔吐や頭痛はさほど無いと思います。
この治療は関根さんと私達看護師の心を合わせた病気への戦いになりますから、頑張って行きましょうね!」
デップリとした優しい目の中年の看護師に握手された。
母親は
「はい…」
と、か細く答えた。
「娘さん?必ずお母さんは治しますから、いつも笑顔で接してくださいね?」
「はい!わかりました。
来週からよろしくお願いします。」
優しい目の看護師が2人に聞いた。
「何かわからないことありますか?」
静香は
「あの。ご飯は何を食べてもいいんですか?」
「はい。今までと同じで大丈夫ですよ。
関根さんはお粥が多いんですよね?
胃が半分しかないから固いものじゃなければ大丈夫ですね。
もう、お昼ですね。美味しいお蕎麦とかおうどんとか温かい消化にいいものを召し上がってくださいね。
それと、くよくよメソメソはダメですよ?
関根さんは心配性な所があるから、来週からは私達に全てを任せてこちらに来てくださいね。
ちゃんと治して1ヶ月後は退院させますからね♪」
その一言で母親は安心したようだ。
笑顔で病院を後にした。
「静香?美味しい蕎麦屋さんの所に行きましょう。
お母さん、お腹空いちゃったわ。」
さっきまで青い顔をしていた母親の顔が笑顔になっていた。
「あの太った看護師さんって魔法使いよね(笑)
あの人の一言で不安が安心に変わってしまったわ。
先生より頼もしい人ね♪
あの看護師を信じて1ヶ月頑張って入院してみるわ!」
なにかを吹っ切れた母親の態度が、静香には救いだった。
ずっと青い顔をしてため息ばかりついている母親と食事は堪えられないものもあったからだ。
美味しい蕎麦屋の「蕎麦せいろと寿司のランチセット」を堪能した2人だった。
食事中は病気の話はしないで、美味しいお蕎麦とお寿司に舌筒した。
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