忘れられないあなた ～never forget you～

578. 次の日

「え〰️！みよばあが又、入院〰️？」

学校から帰って来るなり、憲一がみよばあに病院の先生に何を言われたのか聞いたら、来週から入院することになったことを直接みよばあに聞かされた憲一のリアクションだった。

「白血病？」

憲一にしたら初めて聞く病名だった。

「それって血液の病気？

貧血の重い病気なの？」

みよばあが黙って頷いた。

「白血球が多くなる病気。だから、貧血ばかりしていたのよね。

１ヶ月入院して治療すれば治るんですって。

先生と看護師さんを信じてみよばあ、頑張って入院してくるね。

憲一も時々お見舞いに来てね？」

「うん！バスで土浦駅終点まで行ったら、病院直行便が出ているんだよね？

僕ね。1人でバスに乗れるよ♪」

「憲一？大丈夫よ。お母さんが土日には車で乗せて行くわ。

結構、バスは乗り換えの時間にロスがありすぎて心配だから！ね？」

憲一はわかったと頷いた。

これから先の事を考えて、妹にも入院の事を連絡をした。

明日からハワイにツアコンの仕事があるらしい。

終わったら直ぐに病院に駆けつけると約束して電話を切った。

…急性骨髄性白血病。

これからその治療の為の入院で静香は忙しくなるのだった。

梁田と飯田。そして旦那にその病気で入院することを話した。

梁田とは今週いっぱいで柏営業所の臨時事務員は終了する。

来週からは川井が戻ってくる。

明日、1時間だけ話がしたいと梁田が言い出し、残業で遅くなる事を母親に伝えた。

飯田は今は母親の事だけ考えてあげてくれと言われた。

少し落ち着いたら、会おうと言う話になった。

旦那は来週の土曜日帰って来ると言って電話を切った。

次の日。とりあえず静香は会社に出社した。

所長が母親の入院なら、一週間休んでいいと言ってくれた。

その代わり後一週間、梁田を臨時事務員の延長してもらうつもりだと言う。

梁田は快く一週間の延長を引き受けた。

静香達は勤務時間が終わると、会社を後にした。

いつもの喫茶店に向かった。

「静香さんに沖縄のお土産があるのよ♪

誰にも言えないから、昨日は静香さんに会えなくてムズムズしちゃたわ(笑)」

静香の腕を組みながら沖縄のお土産話を始めた梁田だった。

「こっちは昼間気温は18度前後でしょ？

沖縄は25度前後あるのよ♪まだ夏の終わりって感じなの。

海がエメラルドグリーンで綺麗なの。

ハワイに来たみたいな感覚を覚えたわ。

孝雄さんが、日本海の暗い海とは全く違うな！なんて言ってたわ。

ハワイより綺麗だっても言ってたわ。

2年前社長胚で北日本で1位になったとき、ハワイに初めて招待で行ったんですって。

その時の話をしていたわ。

私も影で応援するためにそこにいたわよ♪って言ったらびっくりしてたわ(笑)

とりあえず私は本社の人間だから、年一回の社長胚の招待旅行はいつもお手伝いするために行くのよ♪

それだけが楽しみで、この会社にいるようなものよ(笑)」

「え？そうなんだ。それは今日子さんの特権ね♪」

そんな話をしていると、喫茶店に着いた。

2人はパンケーキとコーヒーを頼んだ。

「はい。お土産♪」

ちんすこうとペンダントだった。

「ありがとう。可愛いペンダントね。

星の砂のペンダント？」

「そう。ちょっとオモチャみたいだけど、ピンクの珊瑚礁で作ったペンダントよ。真ん中に星の砂のが沖縄で取れたものだから、記念にね。

私も買ったの♪お揃いでいいでしょ？

皆に言われたら大洗で買ったって事にしてね♪

大洗水族館で買ったって。皆には沖縄は内緒だから！ね？

静香さんとデートしたってことにしてね♪」

静香は可愛い嘘に黙って頷いた。

「孝雄さんは珊瑚礁のネクタイピンをあげたの。

沖縄は離れ小島の所に行ったの。

観光地の那覇市は誰か知ってる人にばったり会ったら嫌だから。

皆が知らない2人だけの小島に泊まったのよ。

本当にハワイ列島に来た感じよ。

新婚さん気分でたった1泊だけど…楽しかったわ。

誰にも逢わなくてっていうか、だあれもいないの。

別荘に1日、美味しいもの食べて、海で遊んでフェリーで小島を渡り歩いて帰ってきたのよ。

素敵な所だったわ。

孝雄さんの知り合いのツアコンの人が計画を立ててくれたの。

私を奥さんだと思っていたわ。

奥さん奥さんって言われて…ちょっとニヤケちゃった(笑)

孝雄さんったら、バツイチ再婚なんで。

なんて言っちゃってね。ふふふ。」

幸せそうな2人だけの世界が見え隠れした静香だった。

自分に重ねながら。

ちょっと羨ましい梁田が眩しく見えた。

「ごめんなさいね。静香さんが大変な時に…

アツアツ話で…」

「ううん。今日子さんの幸せそうな顔を見るのが私は好きだから。

楽しくて良かったわね♪お土産ありがとう。」

パンケーキを食べ終わると2人は店を出た。

「じゃあ。又明日ね。ねえ？川井さんってどういう人？

明日、お昼に又ランチする時に教えてね？」

「うん。とてもいい人よ。

ちょっと強面の取っ付きにくい人に見えるけどね。」

「静香さん？取っ付きにくい人に悪い人はいないわ♪」

2人は顔を見合わせて笑った。