583. 母親の入院初日

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583. 母親の入院初日

次の日の月曜日。 「それじゃあね。みよばあの病気早く治るように祈ってるね! 僕とよしばあも学校から帰ったらお父さんに迎えに来てもらって病院に行くからね♪ いってきまーす!」 憲一が元気に玄関を飛び出した。 「え?よっちゃんが迎えに?よしさんも来てくれるの?」 母親の質問に旦那は微笑んで、 「昨日、実家に行った時お義母さんの入院の話をしたんだ。 そしたら、是非お見舞いに行きたいと言い出して… それなら月曜日、俺はいったん午後戻ったら憲一と一緒に俺の車に乗って行けばと提案したんだ。 俺も水曜日から仕事だから、火曜日の夕方には帰るから…その方がいいかなって思って… だから、静香はお義母さんを乗せてくれるか? 俺は自分の車で行くからさ。」 「うん。わかったわ。それじゃあ。帰りに惣菜屋に行って何かよっちゃんと憲一の好きな惣菜買ってね。」 「ああ。そうするよ。 まあ、もしかしたら帰りに何処か食べに寄るかもな。 外で食べればお袋も何かと楽だろ?(笑)」 そんな会話をしながら病院に行く準備をした。 「よっちゃん?先に行くね。」 静香は母親を車に乗せると病院に向かった。 旦那もすぐに後から来てくれた。 508号室 ここは癌病棟だった。 部屋に入ると手前の廊下側のベッドが1つ空いていた。 「関根さんはこちらのベッドでお願いしますね。」 母親が記入した入院に関する保証人の用紙を渡した。 看護師がその用紙を受け取ると、次に病院内の注意喚起とベッドの脇の移動ロッカーとテレビの使い方の話をした。 看護師は全てを説明が終るとナースステーションに戻っていった。 今日はまず担当医とこれからの治療の細かい話を聞くことになる。 「お母さん?こんな感じでいい?」 静香はロッカーに2日間の下着やパジャマ、タオルを母親が直ぐにわかるように置いた。 「ありがとう。」 3人が一旦病室から出ようとしたとき、看護師が 「関根さん。先生が来ましたからナースステーションに来てください。こちらです!」 ナースステーションの隣の部屋に通された。 「俺は外で待ってるよ。」 旦那の言葉に 「よっちゃんも一緒に先生の話を聞いてて欲しいわ。 静香だけだと不安だから…」 全く私の事は信用していないんだから! でも、先生の話を全て伝えられる自信もなかった静香だった。 3人は先生が居る部屋に入った。 ブラウン管テレビの用なパソコン(window95時代)の前に主治医は座っていた。 「ご家族の方ですか? どうぞお座りください。」 看護師がパイプ椅子を用意してくれた。 「関根さんは今年、癌の手術をしたばかりなので、今回の血液の癌の抗がん剤治療は普通の人より関根さんの身体を思って、進めて行きますね。」 先生はパソコンを見ながら 「白血病とは、血液中の細胞の一種である白血球ががん化する病気のことで、いわゆる“血液のがん”と呼ばれるがんの1つです。 白血球の基になるのは、骨髄の中に存在する“造血幹細胞”と呼ばれる細胞です。 造血幹細胞は分化の過程で、さまざまの段階の前駆細胞を経て、最終的に白血球などの血液細胞を生成しますが、何らかの遺伝子異常が白血球に成熟する前段階の細胞に生じることで、白血病を引き起こすと考えられています。 しかし、関根さんの場合は骨髄検査をしましたので、“ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型”に感染することによって引き起こされることが分かっており、何らかのウイルス感染が発症に関与したと考えた方が妥当でしょう。 せっかく内臓を切り落として癌を治したのです。 綺麗な内蔵が腫れ上がる前に、明日から抗がん剤治療を行いますね。 関根さんの身体を充分に労るように他の人より少なめの抗がん剤を投与しますから、1ヶ月近くかかります。 関根さんの病室の患者さんは皆さん同じ病気ですが、自分だけが取り残されてるなんて考えはしなくていいですよ。 ゆっくり完璧に治すだけですからね。 何も不安にならなくて大丈夫です。 ただ、抗がん剤の副作用もあります。 吐き気や頭痛やめまいやふらつき等です。 人によって副作用は異なります。 辛いときはすぐに看護師に言ってくださいね。 薬を変えますから。関根さんに合うお薬を投与しますので相談仕合ながら病気と戦っていきましょう!」 3人は主治医の事細かな説明に納得した。 これから始まる白血病の抗がん剤治療に立ち向かおうとしていた母親だった。
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