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608. いよいよ明日が母親の退院
「お母さん!起きて!寝坊助母さん!!」
憲一が静香の部屋の襖を開けて、怒鳴っていた。
朝方まで寝られなかった静香は朝になってウトウトと寝てしまったのだった。
「え?今何時?」
静香は布団から飛び起きた。
「9時だよ!9時!お母さんが起きてこないから朝ごはんは僕が作りました!」
台所のテーブルの上に目玉焼きと焼いたシャケが置かれていた。
今日は土曜日だ。母親の退院は明日の日曜日。
明日は大安だから、土曜日にしないで明日に決めたのだった。
「寝坊助母さんは昨日9時に起きました!ってみよばあの、前で言うからね!
僕は昨日ちゃんとゲームしないで9時には寝たんだからね?」
昨日の仕返しばかりと憲一は静香に、告げていた。
「はいはい。どうぞ。朝方頭が痛かったから少し起きるのが遅かったの。
仕方ないでしょ?たくっ!」
憲一の態度に大人げない母親になっていた。
「全く!感謝もできない大人になりたくないね!
ほら!ご飯が冷めるよ!」
憲一は椅子に座ると先にご飯を食べ始めた。
確かに子供に起こされて、息子が作った朝ごはんに感謝の言葉も言わずに文句言っている大人が私なんだと思うと、ちょっと恥ずかしくもなった。
洗面台の前で顔を洗うと、静香は椅子に座ると
「朝ごはん。ありがとう。いただきます」
そう、憲一に言って茶碗を持った。
「やっと大人になれたねお母さん!」
嫌味たっぷりに憲一が言った。
母親失格だとは思ったが、カチンと来た静香は憲一の前では無言のままご飯を食べた。
「皿洗いはお母さんに任せるね!
僕はテレビ見ないといけないから!」
土、日曜日は朝から子供番組が多かった。
静香は横目でテレビを観ながら、無言のまま皿を洗って洗濯物を干しに行った。
ピンポ~ン。
玄関前に誰かチャイムを押した。
「憲一?出てくれる?」
廊下の軒下で洗濯物を干していた静香は、憲一に言った。
「はーい!どちら様ですか?」
「オレだよオレ!」
「あ!よしばあ?」
義母が沢山の野菜を持って来てくれたのだった。
「明日はみよさんの退院だからな。
退院祝いをしたいけどよ。
あまり固いものは食べられないって聞いてたから…。
煮物は作って来たんだよ。それと野菜…。」
憲一は義母の手を引いて、ソファーに座らせた。
「お義母さん!電話くれたらこっちから出向いたのに。
わざわざこんなに沢山の野菜をいただいて…。
重かったでしょ?」
静香は廊下から、義母が座ったているリビングまで駆け寄った。
「よしばあが僕の好きな煮物持ってきてくれたよ?」
憲一がテーブルの上のタッパーを指さして言った。
憲一=旦那も、好きな肉じゃがときんぴらだった。
「あら?天ぷら?」
静香が母親は天ぷらは食べられないことを言おうとしたが
「それは憲一達がお昼に食べるおかずだ。
みよさんは油物は駄目だと知ってるから、今日食べてしまいなよ?」
憲一は銀紙に、包んであった天ぷらを見て
「わーい!僕の好きなエビが入ってる!
ありがとう。よしばあ。」
孫に言われて微笑む義母。
さっきまで沈黙の空気が嘘のように晴れた。
やっぱり喧嘩口調になった時は、もう一人家族がいると空気が変わる。
静香はまた、飯田とハワイに行ってこんな風に風向きがおかしくなった時、頼りになる人が誰もいなかったら…。
不安が静香の決断を鈍らせた。
明日は母親の退院の日だ。
旦那は病院で待ち合わせになっていた。
静香は憲一と一緒に病院に、向かう。
旦那は直接社宅から病院に向かう話にはなっていた。
やっと、母親が返ってくる嬉しさもあるが、
食事療法とか病院と話を聞かなければならなかった。
これから、食事に一番気を使う事になる。
静香はちょっと不安が過ぎった。
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