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611. 旦那との会話
静香と母親がレシピを眺めていると、旦那と憲一はゲームで遊んで楽しんでいた。
「わ〜!負けたー!憲一は強いなあ」
マリオカートで親子二人はゲームをしていた。
「えへん!お父さんも尚ちゃんも僕には敵わないんだね!」
「え?尚ちゃん?」
飯田の名前を聞いて静香はドキリとした。
「うん。一昨日尚ちゃんと遊んだんだよ♪」
思わず、静香は
「あ。そうそう。尚ちゃんのお父さんが亡くなってね。私と憲一でお葬式に参列したのよ。ね?憲一?」
「うん。それでね。何だかお葬式に来てくれたお礼にってマリオの弟のルイージが釣ったあんこうを持ってきてくれたの!
とっても美味しかったよ〜♪」
「あんこうか?へえ?食べたいな!お父さんにも残ってるのかな?」
「あ。ごめんなさい。釣り仲間がみんなで食べた残りだから、食べちゃたわ」
「そっか。残念だな〜」
「でもね。お父さん!2月にあんこう鍋を大洗でやるから来いって尚ちゃんが言ってたよ?
お父さんも行こうよ!キモ鍋が食べられるって!」
静香は余計なことを憲一の口をとだしたかった。
「へえ!あんこうの肝鍋か〜。食べたいな。
その日が近づいたら教えてくれよな?」
何も知らない旦那は満面の笑みを浮かべて憲一に、言った。
「うん!メールするね♪」
笑顔で答える憲一だった。
静香はせっかく飯田に会えると言うのに、旦那が一緒じゃ楽しさが半減だ。
「あら?アンコウ鍋?私も食べたいわね。
来年の2月なら胃腸も元に戻ってることだから…。
昔、寿司屋で働いてたとき賄いで食べさせてもらって、すごく美味しかったから。
懐かしいわ。あの頃は安くて賄い飯用だったけど、今じゃ高級料理ですものね。」
「そうなの?よしばあも行けるのなら、皆で行こうよ!
わーい!もしかしたら、釣り仲間と会えるかもね♪
嬉しいなあ♪」
母親まで連れて行くことになった静香の胸の内は
がっかりを通り越して、苦笑いしかできなくなった。
旦那と憲一がゲームが終わると二人でお風呂に入った。
その頃は母親も部屋に戻って眠りについた。
静香はお風呂から出た旦那にビールを飲ませて酔わせるつもりでいた。
そして、遅くお風呂に入って長くお風呂に浸かっていれば諦めて、酒も飲んでいるからそのまま寝てくれると思っていた。
時計は9時半になっていた。
「僕、眠くなってきたから部屋に戻るね。
おやすみなさい」
憲一は沢山父親に遊んでもらったから、満足して眠りについた。
静香は冷凍庫からビールを出して、旦那の前にグラスを置いた。
「ビール飲むでしょ?1杯どうぞ♪」
静香が言うと
「お!気が利くね。1本だけ飲むよ。風呂上がりのビールはたまんないなあ」
旦那はグラスを手にするとグイグイと一気に飲んだ。
「静香も飲めよ。グラス待ってきたからさ。」
旦那はそう言うと棚からグラスを取った。
「え?私はいいわよ〜」
「たまには付き合えよ。ほら。」
旦那はそう言うとグラスにビールを注ぐ。
仕方なく静香も、ビールを口にした。
「二人っきりで飲むなんて、何年ぶりだろうな?
いつも、一人で頑張ってくれてありがとう。
感謝してるよ」
旦那に面と向かってそんな事を言われて、静香は自分のしていることに心が苦しくなった。
「私だけじゃないでしょ?よっちゃんも一人で頑張ってるじゃない。
そんなのおあいこよ。感謝なんてしないでよ。」
旦那に見つめられるのを拒むように静香は、言った。
「いや。なんかさ。ちゃんと言っとかないと破局を迎えられたら大変だかさ。
俺の先輩で今年離婚したんだよ。
ずっと単身赴任で俺より帰る回数が少なくて、この間帰ったら奥さんに離婚届け突き出されてさ。
好きな人できたから子供も連れて出て行きます。
教育費はいりません。その代わり慰謝料は請求しなでくださいって言われて。
子供ももう新しいお父さんがいいって言われて…。
ショックで仕事休んで。いつの間にか辞めて何処かに行ってしまったんだよ。
だから、俺もその先輩の二の舞いになりたくないから。
ちゃんと静香とは面と向かって感謝な気持ちを伝えないといけないなって思ってさ。」
やめてよ〜。そんな事言わないでよ〜。
静香の心臓はトクントクンと速くなるのを覚えた。
まさしくそれは私だ。
私は憲一を、置いて出ていこうとしている。
その奥さんより罪深い女だと思うと、旦那の顔を見られなくなった。
「私、お風呂入ってくるね。」
ビールを飲み干すと静香はそう言って、お風呂に向かった。
「ああ。わかった。待ってるよ♪」
笑顔で静香を待つ旦那に背を向けてお風呂に向かう静香は旦那とは正反対に暗い顔をして憂鬱な気持ちでお風呂に、入ったのだった。
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