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「あんっ」
「ね…イイ…?」
───薄暗い室内から、漏れ聞こえる声。
男心をくすぐるような女の喘ぎ声の合間に、わざと濡れた音を立てて肌に吸いつく、淫らな行為を想像させる靡音が混じる。
「服の上からでも分かってたけど…胸、おっきいね」
「や、だぁ…タケシくんったら」
一条の光がブラインドウの隙間から差し込む中、縺れ合う男女の姿。
たまたま部屋の前を通りかかった柏木淳也は、わざとノックをしてからドアを開けた。
「済みませんが」
ノックの音と淳也の声に驚いた一組のカップルは、弾かれたように離れる。
「会社の会議室での密会なら、ちゃんと鍵、して貰えますか」
「や、やだぁ…! ちょっとぉ」
(──ああ、そういうこと)
会議室のドアの解錠には、解錠用のカードキーが必要なのだが、金のピアスを揺らして露になった胸元を隠す女性を見れば、そんなセキュリティ上の問題など論じる必要のない権限を持つ、秘書課でフェロモン女子と言われて男性社員にちやほやされている美女だった。
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