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彼女であれば、気に入った男性社員をどこかの空き部屋に連れ込み『昼下がりの情事』もできるだろう、と白けた顔をして視線を逸らした淳也の脇を、手早い動きで身支度を整えた女が駆けて行く。
「いや~、カギ、閉まってなかったんだ」
「…防犯上の理由から、オートロック錠じゃないからね」
暗がりで美女と濡れ場を演じていた男は寛げた首元を整えながら、出入り口に佇む淳也に近づいてくる。
(松平 剛)
貼りつけたような笑顔ながらも、その口元の笑みを見ただけで淳也の胸は騒がしくなる。
──弾む息を整えながら部屋を出て行った秘書課の美女同様、にやけた顔をして淳也に近づいてくるこの男も、社内で知らぬ者などいない有名人だった。
淳也と同期入社ながら、三ヶ月目には『社内一のイケメン』として社内報に取り上げられ、それから二年経った今では、
『彼としたい女の子が順番待ちをしている』
という噂が立つほどの浮き名を流すタラシだと、誰しもの脳にインプットされていた。
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