続きは鍵を閉めてから

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   初めから、分かっていたはずじゃないか。  どこからともなくこんこんと湧く清水のように、次から次へと浮き名を流していた剛。  それが何の因果か、男しか愛せない淳也の手をとる巡り合わせを引いた。  しかもそればかりか、何の抵抗も示さず抱いてくれたことは…奇跡と呼んでも、まがいない出来事だったじゃないか。  一度結ばれた肉体は離れることはないと言わんばかりに抱き合い、ぐずぐずに溶ける身体を、何度も、何度も灼熱の楔で、穿ってくれて…  快楽に溺れ、醜態を曝す淳也を剛独特の甘やかな眼差しで真っ直ぐに見つめてくれただけでなく…優しくとろけるように、抱いて──くれた。       夢じゃない。  だけど、夢だったらどんなに良かったかと…思わずにはいられなかった。 「!」  そう思う心とは裏腹に、恋してしまった人の姿を目で追ってしまう淳也の視線は、愛しい人の姿を容易く探し出してしまう。  こう何度も見かけているのだから、剛が淳也に気づかない訳がない。  年の割りには幼く見える顔に笑みが浮かぶと、更に幼く見えるベビーフェイスに見つめられていると気づいた淳也は、反射的に俯き、顔を背けてしまう。 .
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