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「四葉不動産の経理も、NOMURA建設とNOMURA親和会なら、関係団体だと考えて手続きを進めるでしょうからね。山一は、四葉不動産の支払ミスだとNOMURA親和会の経理担当に言って自分の口座に振り込ませる。よくある手口ね。……それなら、いくつかある定期預金も……」
瑞穂が言った。
「リーマンショックで景気が衰退した後の数年間、いくつかの不動産を売却しましたから、同じことがあったのだと思います」
「そうなのね。で、これを経営改革会議に持ち込んで山一を放逐する? それとも、告発して2人の刑事責任を問う?」
美智を見る瑞穂の瞳には、試すような意地悪な光が混じっていた。
「それは、どちらも具合が悪いのではないでしょうか?」
「どういうこと? 説明して……」
「合併を前に事実を公表したら、野村会長と山一さんだけでなく、NOMURA建設の経営陣の責任も問われます。それに、NOMURA建設の価値だった、世間からの信頼という看板を失うことにもなります。そうなったら、NOMURA建設の役員は総退陣、社名さえ残らないかもしれません。何よりも、高野須が経営に口をはさむのを許すことになるのではないでしょうか? 下手をすれば、彼が社長になると言い出しかねません」
「確かにそうね。彼とモチズリ建築は繫がっていそうだし……」
瑞穂が額に皺を作った。
「それはないと思います」
「えっ、どういうこと?」
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