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ここはどこだろう?……佐久間美智は、二日酔いのような頭痛と戦いながら暗闇の中を歩いていた。すると、どこかで「お腹が空いたわ……」と声がした。一瞬、神の声かと思った。が、そんなはずはない、と否定する冷静な自分がいた。
「美智さん、大丈夫ですか?」
2度目の声で、その主が仲田弥生だと気づいた。重い瞼を持上げると人工的な光があり、視界に灰色の天井が現れた。
ああ、夢を見ていたのだ……。痛む頭は霞がかかったようにぼんやりしていて、どうして弥生と一緒にいるのかわからなかった。声の方に首をひねると、ジャージ姿の彼女がいた。
「起こしちゃって、ごめんなさい」
弥生が身を乗り出して丸い顔を近づける。彼女の体重に耐えかね、ベッドのスプリングがギシギシ泣いた。
「アッ!」美智の脳内に稲妻が走った。昨夜、弥生や大村チヅルと共に高野須芳徳の事務所に乗り込んだことを思い出した。
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