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経営コンサルタントを称する高野須は、居酒屋やキャバクラ、パチンコ店などを経営する傍ら、畑中栄造議員の私設秘書も務めており、NOMURA建設とモチズリ建築の合併、及び企業移転に伴う大規模工事の斡旋と迂回献金を画策していた。NOMURA建設の野村勇作社長は彼の提案に飛びつき、工事金額の水増しで得た利益の半分を献金するという念書にサインをしたばかりか、キャバ嬢との浮気現場を写真に撮られて高野須に逆らえなくなった。そうした事態を打開すべく、念書と写真を取り戻そうとした監査役の片桐瑞穂が高野須に監禁された。
彼の事務所に乗り込んだ美智たちは、瑞穂の救出に成功してチヅルが自宅に送り届けた。一方、瑞穂に頼まれて念書を取り戻そうとした美智と弥生は、高野須に捕らわれてしまった。彼は、体格が良くてジャンボと呼ばれる柔道四段の弥生をひと蹴りで悶絶させるほどの空手の達人だった。そうして二人は、高野須が仮眠室と呼ぶ部屋に閉じ込められたのだ。
「弥生さんこそ……、大丈夫?」
美智は痛む額に手を当てて上半身を起こした。
「ええ、蹴られた脇腹は少しズキズキするけど動けます。美智さんは何もされなかった?」
「……何もされていないみたい」
自分の身体を確認しながら応えた。実際、着衣は乱れていなかったし、頭以外に痛む場所もない。頭痛は薬の影響だろう。美智は昨晩のことを思い出した。弥生と共にここに連れてこられた後、高野須に怪しげな薬を無理やり飲まされて意識を失ったのだ。強い薬だったのに違いない。
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