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「この金で増資したのね。何とも大胆な手口だわ……」瑞穂が人差し指で書類をトントンと叩く。「……それにしても、山一はモチズリに転職した後も会長のために働いていた。……敵ながらあっぱれ、という感じだわ」
「でも、NOMURA親和会から抜いた金だけでは3億円に満たないはずなのです」
「それはこれじゃない。3年も前のことだけど……」
瑞穂が山一の入出金履歴を指した。そこにはNOMURA親和会からの3千万円の入金があり、翌日の内に引き出されていた。
「そしてこれ……」
瑞穂が指したのは、野村会長の定期預金だ。山一が3千万円を引き出した当日に2千7百万円が預けられ、NOMURA建設が増資を行う直前に解約されていた。
「差額の3百万円は、山一の定期預金にあるわ」
瑞穂が山一の定期預金口座を示す。それも同時期に解約されていた。モチズリ建築の増資に充てられたのだろう。
「NOMURA親和会に3千万円の出金なんてあったかしら……」
美智はスマホに映した帳簿をさかのぼる。
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