求む救世主

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「そう。良かった……」弥生が部屋を見回す。「ここって……」 美智は彼女の視線を追った。テレビがある。食卓テーブルと椅子がある。ミニキッチンや冷蔵庫、通路の奥には洗面所らしいドアもあった。ただ、窓や電話といった外部と繫がるものは見当たらない。 「ホテルと言いたいけれど、監査役が閉じ込められていた部屋ね」 美智は妙に冷静だった。ここを脱出して念書を取り返す方法はないかと考えると、頭がチリチリと痛んだ。 「それじゃ、逃げ出しますか……」 弥生がベッドから下り、相撲のしこを踏むような準備運動をする。脱出したいのは美智も同じだが、無茶をして弥生に怪我をさせたくなかった。 「鍵が掛かっているわよ」 「だからドアをぶち破ります」 フン! と、拳を作った弥生が腰を落として気合を入れる。 「無理をしないで救世主を待ちましょう」 「救世主なんています?」 「監査役がいるでしょ。私たちがいないことに気づいたら、何とかしてくれるわよ。……そういえばチヅルさんは?」 「どうしたのかな……。監査役を送り届けて戻った後、コンビニに行くと言って私を降ろしたんだけど……。まだ捕まっていないところを見ると、どこかで寝ているのかも」 弥生が笑う。美智もつられて笑った。
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