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「そのおかげで捕まらなかったのね。私たちが戻らなかったら、警察に届けるかしら?」
美智は、チヅルが警察に通報するのを期待したのではなかった。まったく逆で、自分たちのことが公になり、NOMURA建設に世間の注目が集まることを恐れた。今の状況を両親にも知られたくない。
「チビはだめですよ。暴走族だったから警察嫌いだもの。警察官の姿を見たら、反射的に逃げるのよ。私たちがいないことに気づいたところで、1人で乗り込んで捕まるのが落ちだわ。おっちょこちょいだから……」
チビというのは身体の小さなチヅルの愛称だ。
「そうかぁ」
美智は残念なふりをしながらホッとする。
「ここは、監査役に期待しますか……。求む、救世主!」
弥生が天を仰いだ。
「監査役が助けてくれなくても、明日の夜には出してもらえると思うわよ」
「そうなの?」
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