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第二章 大迫の思惑
「あいつ、本気なんですかね。」
食事会が終わり、ハルカさんと二人になったアキヒトは彼に尋ねる。
ハルカさんは黙って肩をすくめた。
「奥井先生は変なことする人やあらへんことは
知ってるけど、
あの子のことはアッキーのほうが知っとるやろ?」
しばらくたってハルカさんはそう言った。
言われてアキヒトは考え込む。
昔大迫はあんな奴じゃなかった。
それこそあいつの親父が女を作って逃げなければ、
今でも普通に接していたはずだった。
似た境遇のわりに、二人にはあまり接点もない。
もちろんそんな暇もないから遊ぶこともなかったし
言葉を交わすことも数回しかない。
同じ学校に通っていた幼馴染なのに
それも不思議な話だった。
何のバイトをしていたかも知らないが、
高校生がやれる仕事など限られているはずなのに。
「あいつのこと、そういえば何も知らないです。」
アキヒトはハルカさんに向かいそうつぶやいた。
一方的に意識されて、アキヒトの情報は知られてるのに
自分は彼のことを何も知らない。
そのことに気づいて少し怖くなる。
「ま、亀井先生次第やからな。僕らは静観しとこうや。」
笑顔のハルカさんはどっしりと構えていて
アキヒトはビビっている自分が恥ずかしくなった。
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