131人が本棚に入れています
本棚に追加
両手と首に鎖をつけられて、黄ばんだ服を着て何日も洗われて居ないボサボサの薄汚れた髪をした少女は
下に藁が敷かれている馬車に揺られながら隅の方で壁に寄り掛かっていた。
馬車には自分しか乗せられておらず、外で馬を走らせている男はぶつぶつと「まさかこの国がこんな事に…怖い怖い。もうこの国に用はねえし。巻き込まれたくねぇ。さっさと出てやる。」
そう呟いていた時だった。
急に馬が嘶いたかと思うと、馬車は大きく揺れ、少女も馬車の中で転がる。
何事かと、そう思って耳を済ませてみると、外で何か話をしている。
ずりずりと、その身を引きずって、開いた隙間から外の様子を伺った。
そこには男の背中しか見えない。
「どけどけっオラァ急いでるんだ!!!」
「違法商人であろう。
わたしを連れて行けば、美味しい思いが出来るぞ。」
「あん?」
パサリと、何か被り物をとった音がした。
何を見たのか、先程まで威勢の良かった男は怯んだように言葉を紡ぐ。
「その髪と眼…ー、ま、まさか…っ。」
「わたしの利用方法は貴殿に任せよう。
売るなり見せ物にするなりは、後で考えてくれ。」
「〜…っ。」
男の混乱した様子が背中越しでも窺える。
ギシギシと音がなって、誰かが荷台に登ってくる事がわかったので、思わず飛びのくと
僅かしか隙間のなかった荷台の入り口が、勢いよく開いた。
急に夕日が差し込んで、思わず目を細めてその姿を見上げる。
フードを被っているけれど、見上げていた少女にはその顔がはっきりと見えた。
目立つ黄金の髪に、翡翠の瞳。
白磁のように白い肌。
綺麗な少年だった。
相手も驚いた表情を見せていたが、そのまま荷台に乗り込んでくる。
後ろからは男が慌てて少年を咎めるような声をあげた。
「お…おい!」
「急がねば、貴殿もこの国を抜けられなくなるぞ。
…わたしの使い道はこの国を出てから考えた方が身のためだ。
夢々奴らに引き渡そうなどと思うな。奴らに消されたく無ければな。」
「く…っ.あ〜も〜!!
よく分かんねぇ。後だあと!」
男は入り口を勢いつけて閉めると、再び馬車は激しく揺れ動き、走り出す。
最初のコメントを投稿しよう!