このBEATに乗せて

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「舞衣ちゃんLINE教えて ダメかな」 思い切って聞いてみる。 この情緒不安定を落ち着かせる為にも、安心材料が欲しかった。 今は告白出来ないけど、少しでも繋がる事で、気持ちを保てるような気がした。 「そう言えば、交換してなかったね」 お互いにスマホを出して、LINEを交換した。 「近いうちに新曲出すけん 前にも言ったけど、ライブ見に来て欲しい」 「うん、楽しみにしてるね」 前に誘った時は乗り気じゃなさそうだったけど、今日は「楽しみにしてる」と言ってくれた事が嬉しかった。 「ありがとう」 こうやって話していると、あっという間にいつもの信号まで来てしまった。 今日の信号は赤。 神様ありがとう。 たかが数秒でも長く一緒にいたい。 そんな願いも虚しく、信号はすぐに青になってしまう。 「じゃあ、輝人くん」 そう言って振り掛けた彼女の手を、思わず掴んで引き留めてしまった。 二人の間を、無意味に風が通り抜け、揺れた髪が舞衣ちゃんの顔を隠した。 どんな表情をしてるか見えなくて不安になる。 「……」 「舞衣ちゃん、ごめん、もう少しだけ話したい…」 今は告白するつもりなんてないのに、俺はなにをしているんだろう。 自分の気持ちをコントロール出来ていない。 予想外の行動に出てしまった事に、自分でも戸惑ってしまう。 「え?うん びっくりした」 腕を離すタイミングがわからず、握ったままの手。 出来れば離したくないと思ってしまう。 「輝人くん、手…」 そう言われて、やっと我に帰った。 「あっ、ごめん」 離した手に、舞衣ちゃんの温もりが残っていて、なんだか余計に切ない気持ちになった。 こんなに近くにいるのに…
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