このBEATに乗せて

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「ただいま」 「お帰り輝人 遅かったやん」 「スタジオで三人で合わせとったけん」 怜くんの顔をまともに見れない。 「まだ完成じゃないけど、だいたい書けたから、後で曲と合わせるの付き合ってや」 そう言われたけど、こんな気持ちじゃ出来ない事はわかっている。 プロ意識に欠けている事もわかっているけど、音楽は気持ちに左右される部分が大きい。 「怜くん、ごめん、先に楽器のアレンジ確認したいけん、明日でもいいかな」 「おぉ、じゃあ俺もちゃんと完成させとくわ」 自室に籠り、さっきの事を反省する。 舞衣ちゃんの悩みってなんなんだろう… もし本当に舞衣ちゃんがこの街から居なくなってしまったら、会えなくなってしまったら、俺は諦められるんだろうか… 考えても答えなんて出る訳がない。 ただ、出逢わなかった三か月前に戻るだけと思えるなら、どんなに楽なんだろう。 ギターを手に取り、アルペジオを奏でる。 何度も弾いては舞衣ちゃんの笑顔を思い浮かべる。 何故だか目頭が熱くなる。 やっぱり情緒不安定だ。 この気持ちを切り替えないと、これからの活動に支障を来たす。 これ以上メンバーに迷惑を掛けられない。 先ずは、いい曲を世に出して、次のライブを成功させなきゃならない。 そうじゃなきゃ、舞衣ちゃんに告白さえ出来ないんだから。
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