このBEATに乗せて

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「はい、これ」 チケットを二枚差し出す。 「えっ?! 二枚?」 「友達と来てくれたらいいっちゃよ」 舞衣ちゃんは二枚受け取り、チケットを暫く見つめてから、一枚を俺に返した。 「私一人で行くつもりだから」 「ライブ始めてって言ってたけん、一人は不安やない?」 「大丈夫 輝人くんの頑張ってるとこ、ちゃんと見てみたいの」 この言葉にどんな意味が含まれているかわからない。 今日の舞衣ちゃんは、少し前の様な不安の色はない。 会っていなかった期間に解決出来たんだろうか。 「自分で言うのも変だけど、俺の作った曲、俺のバンド、本当にかっこいいけん! 俺の一番自慢出来る事、ちゃんと見てて!」 「うん! 楽しみにしてる」 そう言って、俺の大好きな笑顔で笑ってくれた。 「舞衣ちゃんが俺の事を好きになっちゃうくらい、かっこいいとこ見せるけん!」 冗談に聞こえるように笑って、変なキメポーズをする。 俺に取っては告白の様な言葉でも、舞衣ちゃんが、俺をただの知り合いと思っているなら、冗談で言っているんだと思うように、おどけて見せる。 今はそれでいいんだ。 今日の信号は青だったけど、どちらからともなく立ち止まり、名残惜しく会話を交わす。 そんな些細な事で、なにもかも頑張れそうな気がして来るから不思議だ。 「あー、夏が待ち遠しい!」 お互い顔を見合わせて笑い合った。
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