40人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい、これ」
チケットを二枚差し出す。
「えっ?! 二枚?」
「友達と来てくれたらいいっちゃよ」
舞衣ちゃんは二枚受け取り、チケットを暫く見つめてから、一枚を俺に返した。
「私一人で行くつもりだから」
「ライブ始めてって言ってたけん、一人は不安やない?」
「大丈夫 輝人くんの頑張ってるとこ、ちゃんと見てみたいの」
この言葉にどんな意味が含まれているかわからない。
今日の舞衣ちゃんは、少し前の様な不安の色はない。
会っていなかった期間に解決出来たんだろうか。
「自分で言うのも変だけど、俺の作った曲、俺のバンド、本当にかっこいいけん! 俺の一番自慢出来る事、ちゃんと見てて!」
「うん! 楽しみにしてる」
そう言って、俺の大好きな笑顔で笑ってくれた。
「舞衣ちゃんが俺の事を好きになっちゃうくらい、かっこいいとこ見せるけん!」
冗談に聞こえるように笑って、変なキメポーズをする。
俺に取っては告白の様な言葉でも、舞衣ちゃんが、俺をただの知り合いと思っているなら、冗談で言っているんだと思うように、おどけて見せる。
今はそれでいいんだ。
今日の信号は青だったけど、どちらからともなく立ち止まり、名残惜しく会話を交わす。
そんな些細な事で、なにもかも頑張れそうな気がして来るから不思議だ。
「あー、夏が待ち遠しい!」
お互い顔を見合わせて笑い合った。
最初のコメントを投稿しよう!