このBEATに乗せて

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他愛もない会話をしながら家路へと並んで歩く。 「今日は会えんと思っとった」 「そうだね、最近いつも会ってるから、会わないとちょっと変な感じだもんね」 「えっ!舞衣ちゃん俺と会えないと寂しいっちゃね? 毎日会いたいと?」 「………」 嬉しくて、調子に乗って変な事を口走る。 こうやって、思った事をすぐに口に出してしまうところ、俺の悪い癖だ。 大事な事は言えなかったりするのに… 「あっ、ごめん、別に会いたくなんかないっちゃね」 「そうじゃないよ、会えると嬉しいよ 輝人くんの笑顔見ると元気出るから」 気を使って言ってくれたんだと思うけど、顔を赤くして俯く姿を見ていると、社交辞令なんかじゃないと錯覚してしまいそうになる。 「それにしても本当に怜くんと仲良いよね」 怜くんを気にする事に、嫉妬心のような気持ちを抱いたけど、それより舞衣ちゃんの笑顔が、いつもより元気がなく感じた事の方が気がかりだった。 「舞衣ちゃん、どしたと?」 「ん?なにが??」 「なんか疲れてる? 元気ないっちゃね?」 「あー、うん、ちょっとね」 やっぱりいつもより元気がない事が気がかりだけど、いつもの別れ道の信号に辿り着いてしまった。 この公園前の信号で俺は左へ、舞衣ちゃんは信号を渡る。 信号が赤だったらっていつも願ってしまう。 少しでも一緒にいたいから。 今日の信号は…青だった。 神様の意地悪。 「じゃ、輝人くん、またね」 と、青信号を足早に渡って行ってしまった。 だんだん小さくなって行く後ろ姿を暫く見つめた。 もう少し話したかったな… 一人になったら急に、夜風が肌寒く感じられた。 「おやすみ、舞衣ちゃん」 もう届かないけど呟いた。 女々しくて嫌になる。 「はぁ」 今日三度目の溜息をついた。
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