このBEATに乗せて

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ガチャ 「ちーっす! …て、なんか二人険悪」 お気楽だけど、場を和ませてくれる大翔が来た事に少し安堵する。 「よぉ 大翔」 流星は何事もなかったような態度だ。 「お前ら喧嘩でもしてたんか? 空気重っ」 「別に、輝人の機嫌が悪いだけで、俺はいつも通りや」 「……」 「あぁ、最近輝人は情緒不安定やもんな」 そう言って俺を真っ直ぐ見て来る大翔は、なにか言いたげに笑う。 「別に、俺もいつも通りやけん」 普通を装いたかったけど、気持ちが外に出易い俺は、うまく誤魔化す事なんか出来ない。 俯いて適当にピアノを弾くふりをした。 「輝人は恋に溺れとるからな」 流星がギターに目を落としたまま、追い討ちを掛けるように言った一言が、俺の心をさらに刺激した。 ガタン みんなに見透かされてる気持ちが、子供っぽい態度の自分が情けなくて、居た堪れなくて、スタジオを飛び出した。 あぁ、これを情緒不安定って言うのかも知れないと、俺の中の少しの冷静が、他人事のように自分を見つめていた。 スタジオの前のカフェで気持ちを落ち着かせようと思ったが、急に飛び出して、財布を置いて来てしまったことに気付く。 「あぁ、付いてない」 仕方なく、夕暮れの町をあてもなく歩いた。 夕方はパーカーで丁度良かった。 暫くすると見えて来たショッピングモール。 ここは舞衣ちゃんが店長を務めてるショップが入っている店舗だ。
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