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それから、数ヶ月の後。
藍蘭は跡継ぎとなる王子を出産し――十六歳の若さで、この世を去ることとなる。不思議なことに、紅帝のものであるはずのその皇子の瞳は赤ではなく――香鈴と同じ、青い眼を持っていたという。
呪いを、解くことはできなかった。
運命はまた、香鈴から愛する人を奪い去ることとなった。
それでも、この世界で死んだクシルは――藍蘭は、死んだ後であってもなお、優しい微笑みを絶やしていなかったのである。
ゆえに、香鈴は、カレンは涙に暮れながらも祈るのだ。
どうか、これが、ただの悲劇ではない結末でありますように。藍蘭がそう、心の底から満ち足りて天国に行けていますように。
――藍蘭……クシル。次の、世界では……きっと……運命を覆して見せるから……!
香鈴の戦いは、終わらない。
いつか愛する人とともに、天寿を全うできるその日まで。
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