<2・鳴沙、教エル>

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「まず、私達の仕事ですが。基本的には、一人の正室の方か側室の方に固定してお仕えすることになります。交代があるとすればその方の希望によるものか、あるいは正室・側室の方がお亡くなりになられたり、お世継ぎが出来た時に限定されますわ」 「女官は、その御子様の世話役に変更になることもあるということでしょうか」 「その可能性もあるということね。なんせ、現在の紅帝様には一人の正室と六人の側室がいらっしゃいますもの。紅帝様は非常に精力がお強く、お世継ぎへの感心もお強い方でいらっしゃいますから、御子様が生まれる頻度も非常に高いのです。二年に一度くらいは、どなたかがご懐妊・ご出産されると思ってくださって間違いありませんわ」  それって、と香鈴は心の中で呟く。世継ぎに熱心というより、単なるエロオヤジなだけなのでは、と。要するに、七人いる后にどんどん手を出すものだから、その后たちが次から次へと身ごもって子供を産むというだけなのでは、と。 「一番立場が上のお后様が、正室の方でらっしゃるのですよね?」  香鈴が尋ねると、その通りよ、と鳴沙は頷いた。 「后になられる方は全て、それまでのお名前を捨てて全員が下に“蘭”がつく名を与えられることとなるわ。一番上の正室が、(リョク)の国から嫁いで来られた緑蘭(リョクラン)様。側室の方々にも順位があります。正室から数えて二番目の地位に当たる側室が藤蘭(トウラン)様。三番目が藍蘭(アイラン)様。四番目が円蘭(エンラン)様。五番目が風蘭(フウラン)様で、六番目が七蘭(シチラン)様。最後の七番目が京蘭(キョウラン)様ね。……覚えたかしら?」 「はい、記憶力には自信があるので」 「よろしい。ちなみにこれは“現時点”での階級よ。この順位は入れ替わることもあるわ。中には元々妾であったにも関わらず、正室まで上り詰める后様もいらっしゃるの。例えば三番目の藍蘭様はまだ側室だけれど、紅帝様の寵愛も厚いゆえ、男児をご出産された暁には一気に正室になられるのでは、なんてことも噂されているほどね」  なるほど、と香鈴は思う。后の順位は固定ではない――つまり現在正室であっても、うかうかしていると他の后に自らの座を奪われることもあるということか。  正室ともなれば、女ながら実質皇帝の次席と言っても過言ではない権力の座に座ることになる。場合によっては、皇帝を牛耳って政治を思うままにすることも不可能ではないだろう。同時に、男児を産んだ正室を出した一族は、王家の親戚ということになり――未来永劫、王族として手厚い待遇を受けることも可能となるはずだ。  女ばかりのドロドロの権力闘争が繰り広げられているに違いない。ぶっちゃけ怖い、とやや青ざめる香鈴である。つくづく、自分があくまで“女官”の立場で良かったと思ってしまう。しかし。 「……妾というのは、どういった立場の方で?」  これは、聞いておかねばなるまい。場合によっては自分も紅帝の妾にされてしまう恐れがあるからだ。個人的には、好きでもない男や女と抱き合う立場になるなど冗談でもないのである。
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