<23・激痛、苛ム>

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<23・激痛、苛ム>

 水拷問も、さほど長く続けられるものではない。尋問官達もその専門家であるならば、さじ加減はよくわかっていることだろう。水責めは確かに傷がつかないので出血死させる危険性は低いが、それでも長く続ければ水中毒を起こして死亡させる危険性はある。彼らにそこまでの医療知識などなかったとしても、続けるのには限界がある拷問である、くらいは理解しているはずだ。  ゆえに、数時間ばかり過ぎる頃にもなれば。香鈴には別の拷問の方が良いと判断したのか、尋問官が交代することとなった。尋問官達とて休みが必要である、というのも事実としてあったのだろうが。息も絶え絶えの香鈴の傍に降り立ったのは、今度は女の尋問官であったのである。 「とても強い意思をお持ちなのね、香鈴さん。わたくし、感服いたしましたわ」  ひと眼見た瞬間に、香鈴は悟った。この女、好きでこの仕事をやっている人間だな、ということが。香鈴を見る眼が、欲情にギラギラと輝いている。これから一人の人間を責め立てることができることを、心底喜んでいる人間の顔だ。  今度は何をするんだろう、と判断力が低下してきた眼で思う。結局色々なものを上からも下からも漏らしてしまって、非常に汚い有様となってしまった香鈴である。尋問官達は交代の折、そんな香鈴に思い切り水をぶっかけて、汚物を流して去っていった。感染症にかかって死なれては困るからなのかもしれない。汚物塗れという状況から開放されたはいいが、それでも全身びしょ濡れというのは非常に気持ち悪いものだった。――身体がすっかり冷え、お腹を下してしまった直後であるから余計にである。 「ですが、強情を張っても良いことは何もありません。いい加減、真実をお話になられてはいかが?」 「……私は、最初から真実を申し上げております。誓って、藤蘭様を、殺害してなど……おりませぬ。毒を盛った、などというのは。完全に、誤解です」 「まだきちんとお話できる元気があるなんて、流石ですわ。だからこそ、正直になられた方が後の後遺症が少なくてすみますのに。ああ、せっかくお美しい方なのに、今からそれを滅茶苦茶に壊されてしまうというのが、本当に勿体ないことですわね……」  拷問の途中で衣服は全て剥ぎ取られてしまっているので、香鈴は現在全裸である。幸い、今の季節はさほど寒いわけではない(それでもびしょ濡れで放置は勘弁して欲しいところであったが)。今更羞恥もなにもないとはいえ、それでも女尋問官に拘束された両足の間を覗き込まれるのは、十分に屈辱と呼べる行為であった。  彼女は香鈴の両足を、より足を大きく広げた姿勢で固定させる。苦痛の梨でも使われるんだろうか、と香鈴は思った。しかし、尋問官が取り出してきたのは竹串のようなものである。  それを見て、ピンときてしまう自分の察しの良さを呪うべきなのか、どうか。
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