<3・欲情、足掻ク>

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「そんなことを言っているのではない。お前がどのような出自であろうと妻に迎え入れると決めたのはこの私であるぞ。ただ、少しばかり嫉妬してしまうだけだ。お前の破瓜を散らせるのが何故私ではなかったのか、とな。もっと早く、お前が娼婦になど落ちるよりも前に出会っていたなら。妻として大切に大切に、花を愛でるように育てたものを」 「その当時は、私はほんの子供でございますよ。稚児の趣味がおありでもないというのに、お戯れを」 「何を申すか。お前のような美しい女の幼少期が、愛らしくないはずもない。そして幼い頃より嫁入りする娘など、この時勢珍しいものでもないだろう?勿論、月のものが来るまでは子など孕むこともできまいが」  つまり、月のものが来る前から手を出す気があるということじゃないか、と藍蘭は渋い気持ちになる。この男にそういった趣味はないと思っていたのは嘘ではないが――もしかしたら自分の知らぬところで、幼い子供もつまみ食いしているのかもしれなかった。特に、この男は美しければ同性であっても手を出すというのは有名な話である。本人の酒の席で堂々と語っていたからだ――男は子を孕む心配がないという意味で楽だ、余計な婚外子など作れば厄介であるからな――と。 ――巫山戯た事を。  この男が嫌いだ。愛情など、ひとかけらたりとも抱いたことはない。  それでもこの男の妻として此処に入り、監禁にも近い生活を許しているのは。ひとえに、他に生きる術を知らないからだった。  物心ついた時には親に捨てられ、あるのは己の身一つ。  生きていくためには何でもするしかなかったのである。盗みも、夜鷹の真似事さえも。 「それで」 「ひっ」  突然下半身から沸き起こった痛みと快楽に、思わず声を上げてしまった。男がきゅっと、花びらの上に小さく主張する先端をつまみ上げたからだ。くりくりと痛いほどに嬲られれば、体は勝手に交接の準備を続けてしまう。ただでさえ花びらの内側まで舐め上げられ、蜜が溢れて止まらない状態だというのに。 「結局、誰のことを考えていたのだ?誤魔化しはきかんぞ。私は、嫉妬深いのだ」  ほら、言わないとずっとこのままだぞ、と。男は楽しげに藍蘭の体を弄ぶ。自分とて、股の間のものをドス黒いまでにそそり立たせ、余裕など微塵もない状態であるというのにだ。
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