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――当然の報いだ。
そう、ヴィオレットは思った。
当然の報いだ。今までどれ程の町を破壊し、どれ程の人間を無条件に殺戮してきたのだ。
最初は当然、この世界を我が物にしようと企んだ、綿密に組み立てた計画の元に行っていた事だった。しかし世界の半分以上を手にした頃には、自分達の方から我が手中に入ると言い出す者も現れた。つまり、遂に世界の全てを手に入れたと言っても過言ではなかったのだ。
だが、ヴィオレットはそれを認めなかった。気に入らなかったのだ。
勿論、世界は我が手に欲しかった。でももうそれは叶ったも同然。彼の目的はその頃には変わっていたのだ。
彼は尚も町を破壊し、人々を殺戮して回った。時には手に入れた町へも赴いて、気に入らない事を少しでもした者は誰彼構わず殺した。
いつしか人々の命乞いをする声や、絶望に満ちた悲鳴を聞く事に恍惚としていたのだ。誰かの命を、我が手が好きなように出来る。彼が本当に求めていたのはそういう事だったのだ。それに漸く気付き始めた頃だった。
遂に勇者軍が立ち上がる。編成された弱小勇者達は、勿論最初はヴィオレットになど歯の一本も立たなかった訳だが、その後異常なスピードで成長し、とうとう彼の城まで到達したのだ。
それからは、あっという間だった。ヴィオレットの所までに辿り着くまでには勿論僕達も置いた訳だが、そいつらの方が歯が立たなかったようだ。あまりの速さに、やって来た勇者たちを見た時には、彼も思わず笑みを零した。
しかし彼とて、一度は世界を手に入れた魔王である。そう易々と勇者ごときに負けはしない。だが、彼らは本当に強くなっていた。恐ろしい程に、そして敵ながら脱帽してしまう程に。
ヴィオレットは、敗北した。
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