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「お待たせ…ヘレナ。」
ヘレナはジレの優しい声に安心した。
ジレは今の今まで考えていた。
隠れ家にしているあの洞穴で。
何をするのが正解なのか。
いや、それよりも、自分が何をしたいのか。
「全然待っていないわ。」
ヘレナの望みを叶えてあげたい。
昼間に一緒にピクニックに行ってあげたい。
「それよりもあの、どうかな、この格好……似合ってる、かな?」
そんなことをすれば、自分は砂になって死んでしまう。
だったらそのことをヘレナに説明したらいいだけではないか、簡単なことではないか。
「あぁ、とても似合ってるよ。」
しかし、そうなると、ヘレナの望みは一生叶うことは無くなる。
「…ふふ。」
ヘレナの残り少ない時間で叶えたい願いと、自分の命。
ジレは、選び、ここに来た。
「さぁ、行こうか。」
ヘレナは気づかない。
息が乱れ、苦しみ出しているジレの姿に。
「うん!」
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