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「着いたよ、ヘレナ。」
ヘレナを抱いたジレは、ゆっくりと着地した。
ヘレナは待ちきれないと言わんばかりにするりとその腕を抜けた。
「わ、ぁ……!」
そこはヘレナにとっては思い出の場所。
昔、父と母と一緒にピクニックに来た場所、
そして先日も優しくなった二人と共に来た、大切なところ。
「ここであってたか?」
二人と共に過ごした時間を、ヘレナはジレと共有したかったのだ。
ヘレナはこの場所を肌で、匂いで感じ取る。
「うん、ありがとうジレ!私は見えないけど、お父様とお母様が言うには凄くいい景色みたい。どうジレ?綺麗?」
「あ、あぁ……っ…。」
目が霞む。
視界がぼやける。
胸が苦しくなってくる。
「綺麗だ…。」
ヘレナの共有に応えたいのに。
景色の良さを伝えたいのに。
前が見えない。
ただただ、『綺麗』としか言えない。
「とても…きれ、ぐ、ゴホ、ゴホッゲホ!」
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