第十九話

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「着いたよ、ヘレナ。」 ヘレナを抱いたジレは、ゆっくりと着地した。 ヘレナは待ちきれないと言わんばかりにするりとその腕を抜けた。 「わ、ぁ……!」 そこはヘレナにとっては思い出の場所。 昔、父と母と一緒にピクニックに来た場所、 そして先日も優しくなった二人と共に来た、大切なところ。 「ここであってたか?」 二人と共に過ごした時間を、ヘレナはジレと共有したかったのだ。 ヘレナはこの場所を肌で、匂いで感じ取る。 「うん、ありがとうジレ!私は見えないけど、お父様とお母様が言うには凄くいい景色みたい。どうジレ?綺麗?」 「あ、あぁ……っ…。」 目が霞む。 視界がぼやける。 胸が苦しくなってくる。 「綺麗だ…。」 ヘレナの共有に応えたいのに。 景色の良さを伝えたいのに。 前が見えない。 ただただ、『綺麗』としか言えない。 「とても…きれ、ぐ、ゴホ、ゴホッゲホ!」
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