第十九話

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「あ、あぁ、覚えてるよ。」 今のジレにはどっちが上でどっちが下か、区別がつかない。 ジレはそのまま口に運ぶ。 クリームは…。 「…良かった。こぼれなかった。」 「そうでしょ?……モンブラン美味しい。」 「シュークリームも、美味しいよ。」 かすかに感じることのできた味を、伝える。 「ふふ…。美味しくてもう食べ終わっちゃった。」 ジレの手からシュークリームが落ちる。 「紅茶飲む?凄く美味しいのよ。」 あぁ、だけどもう。 時間は残されていなくて。 「ヘレ、ナ……!」 自分がしたいことを。 自分が伝えたいことを、伝えたい。 ジレはヘレナを抱き寄せた。 「きゃ…?」
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