35人が本棚に入れています
本棚に追加
夜。
「げぷ。」
ドールは自分が空けた皿を眺めながら、溜まっていた息を漏らした。
「はしたないですよ、マダム。」
「そうは言ってもねぇ、セバスチャン…うぷ。」
ドールは口を押さえながら続けた。
「アンタが義理堅い妖怪なのは知ってるけど、こうも毎日毎日モンブランを用意される身にもなってよ。」
セバスチャンは皿を片付ける。
「しょうがないではないですか。彼に、いつでも用意して待ってる、と言ってしまった手前がありますから。…くすくす。」
「その彼が来ないから、アタシが残飯処理をしてるんじゃない。太ったらどうしてくれるの?」
「おや、フランス人形の体でも体重の増加はあるのですか?」
「っるさいわねぇ。……げぷぷ。」
「悪態をつかないで下さい。もっとも、それでも笑えるのがわたくしたち、ですが。」
セバスチャンはグラスに注がれたワインを用意する。
「あら、気がきくじゃない。アリガト。」
「……何故貴方が礼を言うのです?」
セバスチャンはドールの隣りの空いた席の前に、それを置いた。
最初のコメントを投稿しよう!