最終話

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夜。 「げぷ。」 ドールは自分が空けた皿を眺めながら、溜まっていた息を漏らした。 「はしたないですよ、マダム。」 「そうは言ってもねぇ、セバスチャン…うぷ。」 ドールは口を押さえながら続けた。 「アンタが義理堅い妖怪なのは知ってるけど、こうも毎日毎日モンブランを用意される身にもなってよ。」 セバスチャンは皿を片付ける。 「しょうがないではないですか。彼に、いつでも用意して待ってる、と言ってしまった手前がありますから。…くすくす。」 「その彼が来ないから、アタシが残飯処理をしてるんじゃない。太ったらどうしてくれるの?」 「おや、フランス人形の体でも体重の増加はあるのですか?」 「っるさいわねぇ。……げぷぷ。」 「悪態をつかないで下さい。もっとも、それでも笑えるのがわたくしたち、ですが。」 セバスチャンはグラスに注がれたワインを用意する。 「あら、気がきくじゃない。アリガト。」 「……何故貴方が礼を言うのです?」 セバスチャンはドールの隣りの空いた席の前に、それを置いた。
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