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西山の目線の先に目をやると、転校生の周りにヤンキーが群がっていた。
どうやら仲良しこよしな雰囲気ではなく、今にも殴り合いが始まりそうな空気である。
西山が何やら決意の固まった侍のような目でこちらを見てきた。
「諒ちゃん」
あら嫌な予感。
「あれやっぱ助けなきゃまずいよな」
「……。いやいやいやあいつ喧嘩強いって俺ら居なくても対処できるって」
むしろ俺ら邪魔だってとだってを繰り返す俺に冷ややかな目を向ける西山。
「見損なったぞ諒ちゃん」
「どんどん見損なえよォ!!」
俺は所詮こういう人間なんだよォ!!
だって怖いもん!!ヤンキーなんて嫌な思い出しかないもの!!!
「行くならお前一人で行けよ見守っててやっからよ〜」
「嫌だ!!一人は怖い!!!」
「この根性無しが!!!」
俺たちがあーだこーだ言い合いをしていると、
元々キャッキャざわざわしていた館内で多くの悲鳴が次々と聞こえた。
騒ぎの方に目を向ければ、信じたくない光景が目の前に広がる。
「……諒ちゃん」
「なんだ」
「俺たち、覚悟が遅かったみたいだな」
「俺は最初っから覚悟なんてしてなかったけどな」
「……転校生たち、殴り合い、してるな」
「……だいぶ派手にな」
元気に殴り合いをする転校生たちの周りには、先生へ連絡をする者、周りに危険を伝える者、泣き出している者、そして俺たちのようにほふく前進でトンズラする者に分かれた。
体育館の出口を通過したところで俺はホッと胸を撫で下ろし、西山は今日食べる夕飯のことを考えていた。
「後で転校生に何があったか聞こうな」
「話は聞きにいくんだな……」
助けに行こうとはしなかったのに、という副音声が聞こえた気がする。
西山くん後で日本海集合な。
俺は、「西山in日本海作戦」を心の中で企てながら教室へと戻った。
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