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「コソコソと隠れて……何かやましいことでもしているのか?」
厳しく凛々しい声の主へ顔を向けると、ヤンキーは「げっ」と言い、竹田さんは「おぅふ……」と天を仰いだ。俺は三度見した。
声の主は風紀委員会風紀委員長、星宮定だった。
「一人ずつ学年とクラス、名前を言ってもらおうか」
「……えーっと僕たち何もやましいことなんてしてないんですけどぉ……」
竹田さんが恐る恐る手を挙げて異論を述べた、
が、
「この俺から見て疑わしい行為だと判断したらそれはもう疑わしい行為だ。例外はない」
それはもう気持ちいいほど一蹴された。
なんだこれ、どーすんだと空を見上げている俺たち。
そうして時間が過ぎていくと、ヤンキーが仕方ないなと言わんばかりに、肩を竦めて喋りだした。
「HAHA、OKそこまで言うなら話をしよう。俺こと羽場夏輝は、そこにいる最高にキュートでプリティーな諒と仲睦まじくランデブーをしていた。そこにいる男、竹田は諒の同室者だ。ただのモブと思っててくれて構わない」
「構うけどね!!??だったら俺も話しますけど、俺はこのカップル※ただし付き合っていないのイチャイチャに巻き込まれた被害者であり、女の子のことが世界で一番好きな色男です!」
「色男って自分で言うんすね……。上記二人の言っていることは八割方嘘です。俺は確かにキュートでプリティーですけど、同時にクールでワンダフルな一面もあるので」
「………………なんだオマエらは」
顔を引くだけ引いてドン引いてる風紀委員長さん。そんな顔引くことある???もうそれブリッジになってねえ??
「…………ふぅ、状況を整理しよう。俺はこのクラスマッチ中に変な空気になっている三人組を発見した。わかるか?それがお前らだ。……いやキョトンとするんじゃない。お前らのことだって言っているだろう。…………まあというわけでお前らに声をかけた。行事中にアホなことする連中なんてわんさかいるからな」
風紀委員長が素早く建て直して経緯と現状をまとめた。
さすがです風紀委員長、と言った小波界の声が聞こえてくるようだ。
「…………お前らは何も問題を起こしてないんだな?」
「あたぼーよ!」
「この組み合わせがもはや問題ですけどね」
「問題なんてこれまでの人生で一度たりとも起こしたことないすよ!」
ヤンキー、竹田さん、俺の言葉を聞いた風紀委員長は「…………なかなかのグレーゾーンだがな………………。……俺の早合点だった、悪かったな。ぜひクラスマッチを楽しんでくれ」と疲れたような笑みを浮かべ足早に去っていった。
「あ、そーいや竹田さん。今何時か分かる?」
「あー?っと、お、11時ぴったし」
「え゛!?まじで!??俺やばい借り人競走行ってこなきゃ!!!」
俺は風紀委員長の去っていった道を辿るように、走ってグラウンドへ向かった。
竹田さんの「頼むから羽場と二人きりにしないでくんなーーい!!??」という叫び声も聞こえずに。
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