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桜の色を打ち消すように
降っては積もる白き華。
素肌に白無垢羽織った女が
桜の樹の下雪に舞う……。
雪の降るなか雲間から
僅かに覗く月明かり。
白魔を女は身にまとい
この世の者とは思えない
禍々しいその美しさ。
月の光を反射して
女が浮かぶ月明かり。
凍てつく空を切り裂いて
天へと差し伸ばされた腕。
信じて伸ばす白い腕。
吹雪を全て受け止めて
空に向かって叫ぶ声。
── 貴方は帰って来たんでしょう。
私の腕へと飛び込んで……。
どうせ私は徒桜。
どうせこの世は徒桜。
微かに聴こえた女の声。
微かに聴こえた嗤い声。
女に何が見えたのか。
花の吹雪が見えただろうか。
しろい、ましろい銀の花。
手向の花は銀の花。
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