怪盗もゴーストも夜のイメージが強い

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怪盗もゴーストも夜のイメージが強い

 虫の声も静まるような夜。新月なせいで光はガス臭い電灯の光のみだった。マントを風にたなびかせ、トゥエルブは走る。イレブンはスーツに身を包んでいた。  二人は夜目が効くため気にもせず目的の場へ向かい、美術館の鍵を開ける。最もいつものような鍵開け技術は使わず、合法的な手段で手に入れた鍵で入ることにイレブンは違和感を覚えていた。自分はもう怪盗としてここまで来てしまったのかと痛感する。  トゥエルブは何の感情も無く鍵を右に回す。油を刺していないのか回すのにほんの少し苦戦したが、さっさと中へ入っていった。僕もまだまだなんだなと思いイレブンはトゥエルブの後をついて行く。トゥエルブは館長に言われた通りに左回りに鍵をかけ直した。それを確認したイレブンが歩きながら話しかける。 「夜の美術館というだけあって不気味ですね」 「いつもなら警察連中が馬鹿みたいに光を出しているからな。俺もこういうのは久しぶりだよ」 「……で、今回の目的は何なんですか?」 「ボランティアだよ」 「それはもう聞きました」  突拍子もなくゴーンという音が、背後からイレブンの愚痴を遮る。トゥエルブもイレブンも警戒して引き下がった。トゥエルブは音の主を拾い上げると、金ダライだった。 「対盗っ人用でしょうか……」 「警報機も無いし、こんな物しか用意できないとはマジでここ金がないんだな……ちょっと寄付してやろうかな。とりあえずスタッフルームに行くぞ」  金ダライは端っこに寄せてまた歩き出す。トゥエルブ達はあくまでボランティアスタッフなので昼間、館長に言われた通りに動かなければならない。最初はスタッフルームにある懐中電灯と各部屋の鍵を取りに行く必要があった。余計な混乱を招かないように他スタッフに見つからないよう昼間は何もできなかったが、トゥエルブは分かっているように道を進んでいく。イレブンは辺りを見回しながらも、一定の速度でトゥエルブの後を追う。 「こんな何も無い箱みたいな美術館でボランティアなんておかしいって言ってるのが、どうして分からないんですか? 幽霊なんかいるわけないじゃないですか」 「いや、いるさ」 「どうしてそんな断言できるんですか!」 「いた方が面白いからに決まってるだろ」  もうこれ以上の押し問答は不要だと悟ったイレブンは黙っておくことにした。幽霊なんかよりトゥエルブの方がよっぽど恐ろしいしよっぽど迷惑だ。そう思うと恐怖心も段々落ち着いてくる。念の為だと渡されていた清めの塩の安否を確認しようと取り出すと、それも無事だった。  しばらくしてスタッフルーム前にたどり着いたトゥエルブとイレブンはそっと扉に耳を当てる。ハッキリ言って防音対策が施されているとは言えないドアからは、ブーンという機械音だけが響く。 「特におかしな音は聞こえませんね」 「そうだな。てか俺らのいつもの癖で聞いちまったけど、よく考えたら今は予告状も出してないから警察連中も来ているはずが無いんだよな」 「もしかして自分が今指名手配中ってことを忘れていますか?」  イレブンの質問に口笛でヒューとだけ吹いて答えるトゥエルブに呆れる。  貰った鍵を差し込みドアをガチャりと開けると、しんと静まり返っていた。先程まで聞こえていた音が、消えている。 「あのブーンという音はどこへ……」 「……さあな。俺たちが入ってきたから咄嗟に隠れたか……な!」  そう言った瞬間トゥエルブは足音も立てずに走り、不自然に膨らんだカーテンを一気に開く。 「ひゃあ!」  降参したという風に隠れていたソレはしゃがむ。いや、しゃがむという表現が適切かはわからない。よくハロウィンのモチーフで見かけるような白いゴースト姿のソレに足はない。体を折りたたむように座り込んだので、しゃがんだのか土下座したのか分からない。便宜上ソレのことはゴーストと呼ぶしかなさそうだ。 「ふ、ふわふわ! 僕悪いゴーストじゃないよ!」
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