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「だったら、ゴーストのコスプレをした一般人だということですか?」
「ち、違うよ! 無害で可愛いゴーストだよぉ!」
「ほぅ……で、何故そんなふざけた口調をしたんです?」
下手に某ゲームのネタを引っ張ってきたせいでガチファンのイレブンを怒らせたことに、イレブンの殺気で自称ゴーストは気づく。トゥエルブはあのゲームのことになると、イレブンがどれだけ面倒かわかっていたので話を逸らす。
「俺はトゥエルブ。怪盗トゥエルブだ。今はボランティアスタッフだけどな。こっちは助手のイレブン」
そう言ってトゥエルブは首にぶら下げたカードをゴーストに見せイレブンを親指で指さす。イレブンは相変わらず不機嫌そうな顔を浮かべる。ゴーストは無い首をひねった。
「トゥエルブ……十二……?」
「そうだよ。カッコイイだろ」
「それなら、トランプに因んでクイーンとか……」
「おっとそれは先客がいるから却下だ」
トゥエルブの真面目な表情にゴーストもふーんといった感じだ。イレブンは咳払いする。
「……僕としてはそこのゴーストが僕らが怪盗ってことに違和感を持たないのが不自然なのですが」
「そりゃあ。だって、僕も昔は怪盗だったもん」
「はあ……?」
イレブンの何言ってんだこいつという表情によくぞ言ってくれたとばかりにゴーストは飛び上がる。そして何処からともなくシルクハットとステッキを取り出した。そして高らかに歌い始める。
「僕は怪盗! 大昔の怪盗! ここが寂れる前に入り込んだのさ。でもダメだった。ここは呪いの美術館〜!」
ここで一回ターンしてウィンクする。トゥエルブもノリノリで踊り出す。
「盗もうとしたやつは全員処刑! 逃げようが無駄さ全員亡霊になる。そして全員地獄行き! それを免れた唯一のゴーストそれが僕! 帰る場所も無くここに数世紀。でも隠れるのも流石に辛くなっちゃった、愉快なゴースト!」
まだまだ続きそうなゴーストの歌。イレブンはパァンと手と手を合わせて音を鳴らし、強制終了させる。それに渋々とゴーストも小道具を何処かにしまった。踊りながら聞いていたトゥエルブは落ち着きを取り戻し疑問を口に出す。
「話を聞く限り、数世紀もあるのにこんな無名なのはおかしくないか?」
「違うよ、わざと無名のままでい続けてるんだよ」
「……そうするだけの理由があるんだな?」
トゥエルブの舌なめずりにゴーストは楽しそうに「そうだよ」と返事する。
「全く話が見えないのですが」
イレブンの声からは正直話分からなくても良いかなという思いが伝わってくる。だが、ゴーストもトゥエルブもそんなこと気づかない。
「ここの美術館の奥に僕ら大昔の怪盗が盗もうとしたお宝があるんだ。それはずっと眠っている」
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