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「人の目に晒された時に、何かしらの効果が発動されるんだな?」
トゥエルブに関心したようにゴーストは頷く。
「よくわかったね、そのお宝は館長クラスなら皆知っているんだ。だからここの美術館には賢い奴ほど近づかないんだ。館長になんてなりたがるやつはいない」
「憐れな館長は何も知らなかったと……」
今日一日盗聴して分かったが、あの館長は典型的な無能お人好しだ。ゴルフとコーヒーが好きという情報以外入ってこなかったことをトゥエルブは思い出す。あんな不毛な捜査は久々だ。
ゴーストは同意する意志を伝えるためか、クルンと一回転した。
「そうだよ。だから最近は盗みにくるやつが居なくても僕が色々工作してるんだ。危ないからね。とはいえ君らみたいに好奇心にかられて来る賢いバカも昔から一定数いたけど、みーんなどっかに行っちゃった」
本来なら怖い話のはずがゴーストが懐中電灯で自分の顔を照らすなど過剰な演出が入るせいで特に恐怖を感じない。
コイツがこんな調子だから今まで皆が舐めてかかって失踪したんじゃないか……イレブンはそう思わずにいられなかった。
「ですが少なくとも僕らの仕事である幽霊退治はこのゴーストを倒せばいいんですよね? だったらもう解決できますね」
やっと帰宅できると言いたげに清めた塩を懐からイレブンは取り出す。ゴーストは大慌てで逃げ出そうとしたが、踊っている間にトゥエルブが逃走防止に部屋中に御札を貼っていたのだ。ゴーストは御札に触れようとすると一気に精神があの世へ飛びそうになる。用意周到過ぎる仕打ちにゴーストもたじろぐ。
「まままま待ってよ! ワーカホリックズ! 確かに僕を成仏させればあの部屋に近づくのは容易いよ? でもこのままだと皆死んじゃうかもしれないんだ!」
「そんなこと……」
「僕の体を見てよ! 良ければ触ってみたら!? 皆こうなっちゃうんだって!」
試しにトゥエルブがゴーストを触ろうとしたが、映像のようにスっと手が通過する。映像でないことは、手から伝わる怖気で伝わった。
トゥエルブのいつにない表情にイレブンも何も言えない。ゴーストは御札の効力か少し小さくなっていた。
「どうするんですか……トゥエルブ」
「決まってるだろ。その呪われたお宝を頂くぜ!」
「「はあ!?」」
ゴーストとイレブンが初めて共鳴した瞬間だ。トゥエルブはキョトンとしている。
「確かに予告状を出さなきゃいけねえから、今すぐってわけにはいかないけどな」
「そうじゃありません! 正気ですか!?」
「本当だよ! 賢いバカってさっきは言ってごめんね! 君はバカだ!」
二人の非難の声もトゥエルブは気にしない。逆に何処に怒られる要素があるんだろうという顔だ。
「俺のボランティア内容はそこのゴーストを退治すること。一応それだけなら良いがゴースト退治したせいでそのお宝で余計な被害が出れば、逆に幽霊退治できなかったと判断されてボランティア活動失敗になっちまうかもしれない。それは望んでないだろ? だったら盗んで適当に安全な場所に置いておけばいいんだ。そうすりゃゴーストも強制的じゃなく、本当に成仏できるだろうしな」
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