怪盗はこんな行き当たりばったりで良いのか

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怪盗はこんな行き当たりばったりで良いのか

 鼻歌を歌いながらトゥエルブは予告状を書いている。わざわざ名刺の裏に予告状の下書きを持ってきておいたらしい。イレブンは、実はトゥエルブは最初からこの為にボランティアに入った気がしてきた。 「よしっ。後は何を盗むかだな……おいゴースト、そのお宝の名前はなんだ?」 「えっとねえ…………なんだっけ……」  また悩み始めたゴーストをトゥエルブは悲しそうな目で見つめる。ゴーストは露骨に目を逸らした。 「それも……覚えてないのか……?」 「ごめん、でも仕方がないんだ。見た目は今でも見ているかのように思い出せるんだ! でも名前がどうしても思い出せないよ……」 「とりあえず何か盗むって書いときゃいいじゃないですか」 「それはダメだ! 俺様のプライドが許さん!」 「ですが下手にその呪われたお宝のことを書けば、それこそ世間が騒いで自滅する可能性だってありますよ」  イレブンの一言が聞いたのかトゥエルブは考え込む。 「……ゴースト、そのお宝の特徴を教えてくれ。そのままで書くから」 「いいよー」  ゴーストは軽い返事とともにその美術品の話を始めた。  ゴースト曰くお宝は絵画だ。地獄の様子が描かれており見た者を殺して、絵画に描かれた地獄へ引きずりこむらしい。  言われた通りに書き出してみるとわりとよくあるタイプの風体をしている。これがそんな呪いの力を持っていると言われてもピンとこないかもしれない。それが余計恐怖を生んだ。害の無い見た目をした毒ほど、恐ろしい物は無いのだ。  トゥエルブは「地獄が描かれた絵画を頂く」と記載する。ピンとこないマヌケな予告状だが本人が満足そうなのでイレブンは何も言わない。ゴーストは話を続ける。 「今は館長室にある大きい金庫の裏にその絵画へ通じるドアがあるんだ」  トゥエルブは予告状に「館長室にある」と付け足した。 「その金庫を退ければ良いんですか?」 「それは見てみないと何とも言えねえな。流石に今日盗むわけにはいかないから、下見ついでにまず館長室に行くぞ」 「館長室なら、そこにあるよ……君が扉に御札を貼ったせいで僕は通れないけど……」 「わりー。わりー」  全く悪いと思ってない様子で扉に近づき、訝しげな目でそっとトゥエルブは御札を剥がす。それをポケットに収納し、何かに反応したようにサッと扉に耳をあてる。  さっき自分で「いつもの悪い癖だ」とか言ってたのに……と思いイレブンが近づくと、トゥエルブが左手を風を切るように前に差し出した。近づくなの合図だ。
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