怪盗はこんな行き当たりばったりで良いのか

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 イレブンは手話で「何があったのか」と表現する。暫く耳を傾けるだけだったトゥエルブは手話で続ける。イレブンもそれに答える。 「中に何かいる」 「じゃあ、僕らがいることも分かっているんじゃ……」 「さあな。ずっと呻いているから……なんとも言えない。それにさっきまでこんな音してなかったはずだ」 「どうするんですか? 一旦御札を戻した方が良いんじゃ……」 「その御札の効力が切れてるから剥がしたんだよ」  そのまま二人とゴーストは顔を見合って黙り込む。御札の効力云々がわかるトゥエルブに一切疑問を持たないイレブンとゴースト。流石怪盗が務まるだけの状況判断力だった。 「この部屋から逃げるぞ。イレブン、入口の札だけ剥がしてやってくれ」  そう伝えられた途端イレブンは札を剥がし、トゥエルブは予備の札を館長室扉に貼り付ける。  音に気づいた何かが館長室から出せと言いたげにガチャガチャとドアノブを捻りドアを揺らす。即座にトゥエルブは振り向くこともなく風のように部屋を出ていった。イレブンも辺りを見回し状況を確認しながら後を追う。  トゥエルブとイレブンの手話は分からなかったものの、大体の状況を判断したゴーストも二人に続いた。  美術館と外を繋ぐ扉は入ってきた時に比べ異質さが増していた。トゥエルブから鍵を受け取りイレブンは鍵を右に回す。確かに上手くピースが合わさった音がしたのに、扉は押しても引いてもうんともすんともしなかった。 「ダメです。入口のドアが開きません」 「おい待て。ここは鍵式だろ、開かないわけが……」 「試してみたらいいじゃないですか」  トゥエルブも試しに色々やってみたが、どうも動かない。仕方がないので鍵をかけ直そうとした。鍵が左に曲がらない。トゥエルブは汗を流す。右に回した時、違和感無く滑らかに動いたそれに引っかかりを感じた。トゥエルブは刺したままの状態で鍵を放置してみるとひとりでにそれは左に回っていく。そのほんの僅かな時間を狙って先に手が出たのはゴーストだ。歌い回っていた時使っていた懐中電灯で、その場を照らす。  その様子にトゥエルブとイレブンは探偵が犯人を指さすシーンを思い出していた。そんな呑気な二人組はつゆ知らず照らされた対象はケタケタと不気味に笑いだす。ガタン!という大きな音が三人の脳内に響く。トゥエルブとイレブンは強い頭痛を覚えた。  紫色をしたゴーストのような見た目のソレは目と口を不可能なほど大きく開き、ケケケと合成音声のような音を出しながら消えていく。そしてトゥエルブが札を投げつけるより早く何処かへ逃げてしまった。  またその場を静寂だけが支配する。トゥエルブは無言で鍵を右に回した。今度は少しぎこちなく回ったが、扉はちゃんと開く。トゥエルブは体制を直し意気揚々と出ていった。イレブンも首を小さく横に振ってからゴーストに「でましょうか」とだけ言って出ていく。
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