プロローグ

1/1
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

プロローグ

私が眼を開けると、そこは白い壁の内側だった。足元は氷の様に冷たいけど、それ以外はとても暖かい……。 私は本能のまま、眼の前の白い壁を自分のクチバシで力一杯突いた。 何度、その動作を続けただろう。突然、その壁の一部に亀裂が入り、そして壁が壊れた。 その壁の向こうには愛おしい二人の姿が見える。 「リリー、卵が割れたぞ! 女の子だ! 初めての僕達の娘だ!」 「ええ、あなた……。本当に可愛い……。こんにちは私達の娘、『ミグ』!」 私は割れた卵から身体の半分を出していた。私が包まれていた卵はパパの両脚の間の方卵嚢(ほうらんのう)と呼ばれる部分に包まれとても暖かかったけど、私が振り返るとそこは真白な銀世界が広がり、ブリザードが吹き荒れている。 私はこの極寒の地で両親に守られ、誕生することが出来たんだ。 「さあ、ミグ。これを食べて……」 ママは口を開くと、胃の中に溜まっていた溶けた食べ物を私に与えてくれた。 後でこれは『オキアミ』という生物だと私は知ることになる。 私は両親の愛に守られ、この極寒の地でスクスクと育っていった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!