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プロローグ
私が眼を開けると、そこは白い壁の内側だった。足元は氷の様に冷たいけど、それ以外はとても暖かい……。
私は本能のまま、眼の前の白い壁を自分のクチバシで力一杯突いた。
何度、その動作を続けただろう。突然、その壁の一部に亀裂が入り、そして壁が壊れた。
その壁の向こうには愛おしい二人の姿が見える。
「リリー、卵が割れたぞ! 女の子だ! 初めての僕達の娘だ!」
「ええ、あなた……。本当に可愛い……。こんにちは私達の娘、『ミグ』!」
私は割れた卵から身体の半分を出していた。私が包まれていた卵はパパの両脚の間の方卵嚢と呼ばれる部分に包まれとても暖かかったけど、私が振り返るとそこは真白な銀世界が広がり、ブリザードが吹き荒れている。
私はこの極寒の地で両親に守られ、誕生することが出来たんだ。
「さあ、ミグ。これを食べて……」
ママは口を開くと、胃の中に溜まっていた溶けた食べ物を私に与えてくれた。
後でこれは『オキアミ』という生物だと私は知ることになる。
私は両親の愛に守られ、この極寒の地でスクスクと育っていった。
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