2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼を見つけた。
ファーストフードの店頭で。
いらっしゃいませ。
そう元気よく声を掛ける彼を見て。
わたしは、似合ってるな、なんて、思って。
彼もわたしの事に気がついたのだろう。
少し、はにかんだような顔をしていた。
でも、元気でよかったな。
え?
わたし、心配していたの?
なんでそんな事思ったのか。
わたしには解らなかった。
ねぇ、林さん。
彼はわたしの接客中に、そう小声で話しかけてきた。
あと30分、ここで待っててくれないかな?
そう聞こえた。
わたしは無言で頷いた。
どうして頷いたのか、わからなかったけど。
実はどうしても欲しいものがあってさ……。
なんか、何時の間にかわたしの前に腰掛けている彼は、わたしに一生懸命喋っている。
時折見せるはにかんだ笑顔が、すごく眩しくて。
わたしは彼の前でどんな顔をしていいのか、わからなくて……。
君は。俺といるの、嫌?
彼がそう、言うのが聞こえた。
わたしはどう反応していいのか、迷った。
嫌だって言えば良いのに。
そういう声が頭のなかで響く。
でも、言えなかった。
言いたくなかった。
なんで?
なんでこんな風に思うのだろう?
彼が少し寂しそうな顔に見える。
そんな顔、してほしいわけじゃないのに。
そんな悲しそうな声、してほしくないのに。
わたしはいま、どんな顔をしているのだろう?
どんな顔を……。
最初のコメントを投稿しよう!