II

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ラスバーンは拳を握り、地面を打ち付けた。下半身を亜空間から引き離そうとしていた。 亜空間の裂け目が広がった。グリーマーは打ち付けたラスバーンの拳に向けて自慢の戦斧を振り下ろした。 ラスバーンの小指の付け根に戦斧の刃が突き刺さり、ドス黒い血飛沫が飛んだ。 グリーマーは顔に血を浴びると戦斧から手を離し顔を押さえて悲痛な声を漏らした。 押さえた手の間から煙が舞っている。血を浴びた鎧が溶けて内部の鎖帷子が露出した。 グリーマーが手を離すと焼け爛れた顔が露わになり、皮が剥がれて手に付いていた。 混乱して取り乱すグリーマーは足を踏み外し亜空間の裂け目へ落ちてしまった。片手を伸ばし、砂利を滑らせて這い上がろうとするも着込んだ鎧が重くのし掛かった。硫酸の黒血は鎖帷子さえも溶かし始め、寡黙で冷静だったグリーマーは狂ったように泣き叫んだ。 ラスバーンがサンテガルに気を取られている間に私はグリーマーの伸ばしている腕を掴んで引っ張り上げた。 しかしその腕の肩から先は、既に無かった。
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